長岡市 暴かれた官製談合事件の“不都合な真実”
2020年05月27日
昨年発覚した長岡市の官製談合事件だが、既に関係者は起訴され、裁判で有罪が確定している。とうに終了したと思われた事件は、発覚から1年以上が経過した今、謎がさらに深まっている。市議会3月定例会で須佐武史、関貴志の両市議は、閲覧した検察の膨大な確定資料に基づき一般質問を行った。この2人の市議による質問と、当局の答弁を聞くにつけ、「事件の背景には長岡市による官製談合への組織的な関与があったのでは」と考えざるを得なくなる。
食い違った市側の答弁
長岡市が発注した3件の公共工事をめぐる官製談合事件の裁判で、昨年4月から5月にかけて市の元幹部職員2人、県議の秘書1人、建設業者の元社員1人に次々と有罪判決が下った。それからほぼ1年が経過した。
この官製談合事件について、長岡市議会3月定例会で、須佐武史、関貴志の両市議が一般質問している。2人のうち関議員が質問で述べた内容によれば、「検察が説明した事件の背景」は以下のよう。
長岡市が発注する工事の入札では、発注側が積算した工事価格がそのまま予定価格となり、最低制限価格は予定価格の実質90%に固定されていた。それゆえ工事価格を知ることができれば、最低制限価格を推測できる状況にあった。平成23年当時、建設業者の積算技術向上により、複数の業者が最低制限価格で入札し、くじ引きで落札業者を決める事態が頻発していた。
この状況に対し、地元選出の県会議員から「くじ引き回避の要請」を受けた長岡市は、工事の設計図書にある一部数量などを非公表とし、通常では想定できない数量を設計書に取り入れるなどして工事価格を算出し、建設
業者の積算予測を難しくした。
関係者はこの算出方法を「ブラックボックス」と呼び、これを採用した入札は「くじ引き対策案件」と称された。これが伏線となり、建設業者が県議秘書に対して特定の工事について市側の価格を事前に聞き出してほしいと依頼するようになった。
以上が検察による「事件の背景」だ。事件となったのは平成30年3月と6月に行われた3件の下水道工事に関する入札だった。3件とも、契約可能な下限の金額である最低制限価格と同一額で業者が落札していた。
では情報漏洩は事件とされた3回だけだったかといえば、そうではない。裁判の過程で市の元幹部職員の2人は、2人で合わせて75件以上で工事価格を漏洩したと証言している。
長岡市が実施した「ブラックボックス」を設定してのくじ引き対策だが、検察側によれば、前述のように、「地元選出の県会議員から〝くじ引き回避の要請〟を受けて、市側の積算方法を変えた」というものだった。
関市議は昨年6月の定例会でも、「積算方法の変更、即ちくじ引き対策を行うにあたって、県議の影響があったのか、実態解明のために長岡市として独自調査の必要がある」などと質問している。
これに対し、市の財務部長は、「県議からくじ引き対策の要求はあったが、市独自の判断で積算方法を変更した」と、県議の影響を否定、即ち検察側の主張を否定していた。一方、総務部長はこう答弁していた。「事件の捜査にあたって、長岡市は全面的に協力しており、裁判で事件の背景や要因などの実態が明らかにされた。捜
査権を持たない市が独自調査を行うのは難しく、これ以上の調査は行わない」。
裁判では検察によって「県会議員の影響で長岡市が積算方法を変えた」という事態が明らかにされた。市の総務部長も「事件の実態が明らかにされた」と答弁している。一方、財務部長は、裁判で明らかにされた「県議の影響」を否定している。市側の答弁は互いに食い違うが、市は官製談合事件に関するこれ以上の独自調査は行わないという。この結論は昨年6月と同様、今年3月の答弁でも変わっていない。
いたちごっこの「ブラックボックス」
検察側は、事件の背景として「地元選出の県会議員による〝くじ引き回避の要請〟を受けて、市は積算方法を変えた」と指摘している。なぜ県議はこうした要請をしなければならなかったのか? 以下はある建設業者の話で、関貴志市議の質問や市側の答弁とは関係がない。…続きは本誌に