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2024年11月21日

職員給与アップが確定した新潟市に、ア然

2020年02月27日

昨年12月の市議会で、いったん棚上げになった市職員の給与引き上げ。3月28日までの会期で開催されている市議会で、継続審査となっていた関連議案が可決された。「景気回復」とは無縁な日々を送る下々の市民を横目に、県職員は給料減額を受け入れたというのに、市の職員は逆にアップ…。昭和の寅さんじゃないが、「ヤケのヤンパチ、日焼けのなすび…」で、「持ってけ泥棒!」と叫びたくなる。

 

ヤケのヤンパチ…

 

映画「男はつらいよ」で、主人公、フーテンの寅さんが定番で使う口上のセリフが以下だ。「ヤケのヤンパチ、日焼けのなすび、色が黒くて食いつきたいが、あたしゃ入れ歯で歯が立たないよっ」。

 

世の中には「歯が立たないもの」がずいぶんある。市長や議員、役人の給料などもその部類だ。出資者たる市民が勝手に上げ下げを決めることはできない。

 

市民が役所の経営を任せている市長や副市長、あるいは議員などの給料は、「特別職報酬等審議会」とやらが市長に答申する。一方、市職員の給料は市の人事委員会が勧告するのだとか。

 

昨年11月、新潟市の審議会は市長、副市長、議員らの報酬について〈据え置くことが適当である〉と答申。だが中原八一市長はこの答申よりも前から、「改革の姿勢を示す」として自身の給料をカットする意向を示していた。

 

昨年12月の市議会で、市長の報酬を20%、二人の副市長も10%減額する議案が提出され、全会一致で可決された。、今年1月から市長の月給は116万7千円から93万3千600円に、副市長は94万2千円から84万7千800円になっている。

 

では市職員の給料はどうか?

学校の社会科でお習いしたように、公務員は憲法で保証された労働基本権が制約されている。それで人事委員会が、毎年民間企業の給与等を〝詳細〟に調査し、その結果を基に市職員の給与等について報告、勧告を行っている。

 

この件になると、「いったいどこの企業を詳細に調査しているのか? いいとこだけピックアップしてるんじゃ…」という話になる。それはともかく、神のご託宣のような勧告は、毎年10月に下される。昨年は「月例給、ボーナスともに引上げ〈平均年間給与は約26,000円の増額〉」という結論だった。

 

「改革の姿勢を示す」という中原市長ゆえ、「職員給料のアップに難色を示すか」と思われたのだが…。

 

議案棚投げ

 

昨年11月、中原八一市長は記者会見で、およそ年間3億円ほど市の負担増になる職員給与のアップについて聞かれた。質問者は、「行革が行われる中で、職員給与をアップさせることについてのお考えとその意味」を尋ねた。すると中原市長は一言こう答えている(新潟市のウェブサイトより)。「(給与増額の条例案は12月議会で)提案させてもらいますけども」

 

何だかやり取りがかみ合っていない。その後、再度の質問に、中原市長はおおよそ以下のように回答している。「(市職員の給与は)人事委員会の勧告を尊重し増額させていただきます。新たな財政需要を取り込めるように、集中改革で効果を積み増して、それを吸収していきたい」

 

昨年新潟市は2019年度から2021年度までの「集中改革プラン」を策定した。中原市長の回答は「集中改革で職員給与のアップ分を捻出する」といった意味らしい。改革効果をそんなところに浪費するなら、初めから職員の給与など上げなければいいのに…と思ってしまう。

 

中原市長は「行財政改革の中、市長、副市長の報酬はカット、職員は増額で矛盾しないか」とも問われ、「矛盾ということではないと思います」と、同市長は答えている。

 

かくして職員給与のアップに関する議案が昨年12月の市議会定例会に提出された。新潟市の議会は定数が51。昨年4月の改選後、26人で構成する保守系の大会派、「翔政会」が結成された。市議会の過半数を占める同会は、「この指とまれ」式に「中原市長支持」の議員が集まり結成された会派だ。

 

日頃は市長支持の翔政会だが、職員給与のアップについて、イエスと即答はしなかった。市民ウケも芳しからぬこの議案を継続審査、即ちいったん棚上げにした。その理由は以下のよう。「中原市長は財政の健全化に向けた集中改革プランを示している。市ではこれまで様々な予算を全面的にカットしたり半減したりして、市民に負担を求めてきた。こちらの予算を増やすなら、その分どこかの予算を削らなければならない。市職員の給与を上げるなら、それに見合う分、どの予算を削るのかを明らかにしなければならない。今回、その説明が欠けていた」

 

市長サイドからは「人事委員会の勧告だから」みたいな話しかなかったらしい。それでさすがの市長与党もすんなり可決にはしなかったようだ。だが前述の理由は「きちんと説明すれば、職員給与アップの議案は通します」と言っているようなもの。

 

エッ、会派再編?

 

昨年12月の市議会だが、職員給与のアップについて、市長与党で市議会の過半数を占める翔政会の見解は前述のよう。一方、共産党や民主にいがたなど、野党系の会派は賛成の意向だった。

 

「職員給与の増額に賛成した各会派の皆さんは、市は県のように追い込まれていない、大丈夫だという認識でした」(保守系の市議)

 

「継続審査」とした保守系大会派の翔政会だが、内部には職員給与のアップに反対の意見、あるいは賛成の議員もいた。会派として「継続審査」でまとまっても、クラブ内の26人が必ずしも同じ意見で完全に一致していたわけではない。

 

もう一つの保守系会派が3人で構成する新市民クラブ。昨年の改選前は「保守系二大会派」の一翼で、連続して議長を出していたのが同クラブだ。職員給与のアップに関する議案は総務常任委員で審議されたが、この委員会に所属する同クラブの市議は議案に反対の意見を表明。同クラブは職員給与のアップに反対と目されていた。

 

市議会の過半数を占める翔政会が完全に一枚岩ではないことに注目したのが、新市民クラブの一部議員だったらしい。

 

「会派に属さない無所属の保守系議員がいますが、こうした議員を新市民クラブに取り込み、さらに職員給与のアップに関する議案で翔政会が割れることを想定し、その一部を自派に取り込もうとしたようです」(保守系の市議)

 

では翔政会で職員給与のアップに関する対応をめぐり、会派を飛び出そうという動きはあったのか?

 

「いえ、会派が割れるようなことはありません」 (翔政会の市議)

 

無所属の保守系議員を取り込み、さらに翔政会の一部も引き込もうというくらいだ。そんな画策をしようとした議員は、よほど求心力があるのではないか?

 

「いえその逆で、あえて手を組もうという議員が何人いるか。まったく知らない1年生議員ならともかく、期数が上の人は組みたがらないし、あえて少数会派に行くメリットもない」 (同)

 

では保守系少数会派、新市民クラブの一部議員の動きは何だったのか?

 

「多数ではなく、翔政会から一人、二人を引き抜くことで、過半数割れさせることが目的だったのでは。こうなれば少数であっても、新市民クラブが議会内でキャスティングボートを握ることができる。

 

例えば野党会派と翔政会で意見が割れた場合、少数会派の新市民クラブがどちらに付くかで政局が左右される。そうしたポジションを得ることで、市長との関係を強化しようとしたのでは」 (保守系の市議)

 

市議会の2月定例会は同月18日に開会した。この日までに議会の会派構成に動きがあったという話は聞かない。

 

議会は勧告より重し

 

市議会2月定例会が始まる前、職員給与のアップに関する翔政会の対応は当初の見込みどおり可決だった。

 

「前回の議会では、市側からきちんとした説明がなかったんです。〝人事委員会の勧告だから〟という、それだけだった。人事委員会の制度が重いことは分かってはいるけれど、議会の決定だって重いはずです。人事委員会の勧告が重くて議会は関係ないというのなら、そんな議案を上げ
てくる必要はない。議会で認めてほしいということで議案が提出されるわけで、議会の決定は人事委員会の勧告より重いはず」 (翔政会の議員)

 

中原市長も「説明が足りなかった」と、継続審査に回った市議らに謝罪したという。「市長が謝ったから可決を約束した」ってことなのか?…続きは本誌に

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