やらねば県が“倒産する” 林業政策から始まった花角知事の赤字退治
2019年12月27日
県財政が危機的状態にあるとして、花角英世知事が「緊急事態」を宣言しているのは周知のとおり。しかしながら花角知事はいたずらに県民の危機感を煽っているのではなく、歴代知事が積極的に明らかにしなかった県財政の内情を公表。その上で財政再
建に向けたスキームづくりを進めているようだ。
花角知事、県農林公社が抱える321億円債務を公表
事態が深刻であればあるほど、人はその事実に触れたがらないものだ。とくにお金の話となると、この傾向が顕著で、たとえば財源が先細りの一途をたどる年金問題しかり、そこから派生した「老後2000万円問題」しかりで、「とりあえずこの話は先送りにしておこう」といったムードが支配的となる。
県民にとってはまさしく寝耳に水の話だが、本稿で取り上げる県農林公社による「分収林事業」の実質的な破綻にしても、県当局にしてみればできれば触れたくない事実だったに違いない。
関係筋が話す。
「県農林公社に多額の累積赤字があることを議会で最初に指摘したのは、元県議の村松二郎さんでした」 (議会関係者)
村松二郎元議員(自民党)は県農林公社の理事を長く務めていたことから、公社の内情に通じていたのだろう。2018年6月定例会の一般質問で以下のように発言している。
「農林公社は今、借金を300億円抱えている。資産も300億円あると言っています。でも、これはトンデモないデタラメです。300億円かけて(木を)育ててきたから、300億円の財産になっているのが当然だという計算手法がルールとして立てられているからです。
でも現実には、実際に潰して始末したほかの県は、評価をさせたら、愛知県は300億を超える借金があるのに1億円にもなりませんでした。
このことを考えたときに、これを山林所有者や県民に説明をしない。県民みんなに300億円の借金を、負債を抱えさせて、何の責任も感じないなどということがあり得るでしょうか」(2018年6月定例会一般質問での村松元議員の発言より)
公社が300億円もの借金を抱えているとする村松元議員のこうした指摘はまったくもって正しかった。総務省の通告を受けて、県が2019年3月に県農林公社分収林事業経営健全化方針を策定したところ、公社の分収林事業において、村松元議員が指摘したのとほぼ同規模の多額の累積赤字の存在が浮き彫りとなったからだ。
同方針によると、県農林公社は2017年までに約321億円を投じて、スギを中心に1万178㌶を造林。植栽を開始したのは昭和
48年で、事業開始当初は林齢45年で主伐した収入の中から4割を所有者に分配し、残りの6割を公社の借入金返済に充てることを想定していたが、木材価格が大幅に下落するとともに労務単価も上昇。
こうしたことから公社は国の方針も踏まえ、契約期間を90年に延長するべく方針転換したが、それでも最終的に199億円の債務が残ってしまうという。
40年延長は「未来への問題の先送り」
そもそも県農林公社による分収林事業とは、いかなるものなのか? 簡単に説明しておこう。
分収林事業とは、個人や自治体、生産森林組合など森林所有者の意向を受け、公社がヒノキやスギなどを植林、森の手入れ作業なども代行し、木が育って売却された際、その収入を所有者と公社で分け合う契約を結んだ事業のことを指す。
県は1972年に県林業公社(現在の県農林公社)を設置。県農林公社と地権者との間の契約では、公社は木材を販売して上がった収益の4割を地権者に支払うことになっている。
しかし国産木材は輸入材の普及により価格がピーク時の4分に1にまで下落。このため県農林公社分収林事業経営健全化方針によると、仮にこの価格水準で木材を販売したとすると、県農林公社がこれまでに投じた約321億円は回収できず、280億円もの赤字が生じるという。
このため公社は国の方針に従い、契約期間を当初の50年から90年に延長する方針を打ち出した。公社は40年延長することにより木がさらに大きくなることから、伐採すれば生産高がその分上がるほか、間伐の収入も見込めるとしているが、あくまでもこれは皮算用にすぎない。
しかも40年延長しても公社がこれまでに投じた約321億円の費用は全額回収することができず、199億円の債務が残るという。こうした多額の債務はいうまでもなく40年かけて県民に負担が強いられるというわけだ。
県議会の中でこうした一連の問題を指摘しているのが重川隆廣議員(リベラル新潟)で、同議員は2019年6月定例会の常任委員会を皮切りに、9月定例会の一般質問および産業経済委員会、12月定例会の代表質問でも公社の対応を追及している。
県農林公社は一口に「40年延長」というが、これは口で言う以上に遠い先の話にほかならない。
重川議員は9月定例会の産業経済委員会の席上、40年という月日の長さを強調すべく以下のように話した。…続きは本誌に