財政危機の新潟市が打ち出した新たな“資金獲得”
2019年08月27日
人間たるや、食うに困るとアノ手コノ手で食い扶持を稼いで生命の存続を図るものだが、地方自治体も同じだ。財政危機に瀕している新潟市は食うに困って必要に迫られたがゆえに、“外貨獲得”のための新機軸を打ち出したに違いない。同市が進める「新潟開港150周年記念事業」での新たな資金獲得手法がそれを如実に物語っている。
市民対象に1口1000円の寄付金集め
今年6月初旬、知り合いの会社経営者が記者にこう言った。「いやはや、新潟市も落ちたものですよ。財政調整基金など各種基金、つまり民間でいうところの貯金が底を突きそうだというのはよく知られた話ですが、その新潟市がカネに困って市民から寄付を募り始めたのですからね。これではまるで物乞いではありませんか」(サービス業社長)
新潟市が物乞い呼ばわりされるとは、到底聞き捨てならない話だ。同市はいったい何を目的に市民から寄付を募り始めたというのか?
会社経営者が続ける。
「新潟開港150周年記念事業のための資金を集めるために、市民から寄付を募り始めたのですよ。文字どおり新潟港が開かれて150周年に当たる今年、新潟市はさまざまな記念事業を行っています。
しかしながら記念事業をするにはカネがかかりますから、通常は市が予算を組んで事に当たるわけですが、おそらく財政危機だから市の予算だけでは足りないのでしょうね。それで足りない分を市民からの寄付で賄おうというわけですよ」 (同)
この会社経営者が指摘する、新潟市が市民を対象に募っている寄付は“ちょこっと寄付”。その名のとおり寄付金額は1口当たり1000円となっている。
関係筋が内情を明かす。
「新潟市が今年4月段階で策定した開港150周年記念事業プランでは、実のところ個人からの寄付金額は1口当たり1万円としていたのですが、いざ寄付金の募集を始めてもなかなか個人で市の記念事業のために1万円も寄付しようという奇特な人はいないわけですよ。
こうしたことから、市は多くの市民が気軽に寄付できる金額に改めようということで1口1000円の“ちょこっと寄付”を始めたというわけです」(議会関係者)
個人向けの寄付金額が1口当たり1万円というのは、そもそも無理があったのだ。たとえば甲子園出場を果たした高校野球チームはその経費を同窓生らの寄付で賄うのが通例だが、自分の母校野球部のためだと分かっていても1万円の寄付を躊躇する人たちが大勢いるという。
それを踏まえれば、単に市民だからという理由だけで、新潟市主催の記念事業のために1万円も寄付する人がどれほどいるかは分かりそうなものだ。
とはいえ、1000円に額を下げたとしても寄付が殺到するものではない。本誌が新潟開港150周年記念事業実行委員会に問い合わせたところ、1口1000円の“ちょこっと寄付”で集まった金額は8月初旬時点で27万円程度だという。
市民を対象とする募金運動には違和感も
もっとも前出の実行委員会は市民を対象とした1口当たり1000円の“ちょこっと寄付”について、単に資金集めが目的ではないと説明する。
「こうしたイベントは従来、行政が中心となって行ってきましたが、新潟開港150周年記念事業は“みんなでつくる、みなとまち新潟スタート!”のキャッチフレーズのとおり、地域のみなさんとともに盛り上がることを目的としています。
こうしたことから行政だけが資金を負担するのではなく、市民のみなさんにも参加意識を持っていいただきたいと考え、“ちょこっと寄付”を実施することになりました」(新潟開港150周年記念事業実行委員会)
1口1000円の寄付に応じてくれた個人に対してはそのお礼として、記念グッズのピンバッチ2個が進呈されるという。このピンバッチを身に着けて各種記念事業に参加すれば、市民の参加意識が高まる(であろう)という寸法だ。
前出の会社経営者が呆れ顔でいう。…続きは本誌に