市内建設業者が吐露した談合の内実
2019年02月27日
長岡市の官製談合事件だが、着地点が見えてこない。1月に建設業者の社員や市の幹部、そして星野伊佐夫県議の秘書らが逮捕された。さらに2月には市役所のナンバー3と
される地域政策監も逮捕されたが、これで事件が終息したとは思われない。事件の構造が判明しない限り、再発防止の手立てを講じることもできない。もっとも市内の建設業者は、「制度をいじくっただけでは、どうにもならん」と語っている。
最低制限価格と同フダはすべて…
「大げさではなく、ロッキード事件以来の衝撃でした」
長岡市が発注した土木工事をめぐる官製談合事件を受け、ある長岡市民はこう言った。昭和51(1976)年7月、地元選出の田中角栄元首相が受託収賄や外為法違反の容疑で逮捕、起訴された。それが「ロッキード事件」だ。前出の市民によれば、「今回のような事件で長岡市の職員が逮捕された記憶はない」という。
1月に市内に本店を置く建設業者2社の社員二人(一人は後に不起訴処分)、自民党県連の会長も務めた県政会の重鎮、星野伊佐夫県議の秘書、そして市役所の工事検査監ら4人が逮捕された。容疑は官製談合防止法違反など。その後2月には、同様の容疑で市役所ナンバー4とされる特別職の地域政策監が逮捕された。
長岡市が発注する土木工事(下水道工事)の入札に関し、逮捕された市の関係者から星野県議の秘書を介し、発注側である市が積算した設計額が事前に業者側へ伝えられていたという。不正に入手した情報に基づき、昨年3月と6月の入札で、業者は契約可能な下限である最低制限価格で市の下水道工事を落札した(いずれも制限付き一般競争入札で、本店所在地などの要件により、入札参加の制限がある)。
昨年3月分は浸水対策下水道工事で、しなの産業が最低制限価格と同じ1千789万1千円で落札。6月分は公共下水道(汚水管渠)工事で、しなの産業が1千843万2千円、北澤工業が1千716万3千円で、いずれも最低制限価格と同額で落札した(管渠は路面に埋設した排水管といった意味)。
前出のような下水道工事の入札に参加している市内の主な建設業者の一部は、「基本、ノー・コメント」と多くを語ろうとしない。一方、下水道工事の一般競争入札には登場しない複数の小規模業者は取材に応じた。
こうした小規模業者らは、「事前に市側の設計額などを伝えられたことは一度もない」と断言している。とすれば、役所側が業者側に価格を漏らすという官製談合は、前出の3件だけだったのか?
「いや違う。(最低制限価格と)同フダはみんなそう(役所側の価格が漏れていた)だ。長岡市の入札の場合、役所の額そのものを聞かない限り、同フダになることなど、ほとんどあり得ないからだ」(長岡市に編入された地域の建設業者)
業者側が最低制限価格を当てることができない理由は後回しにする。平成29年度に行われた工事の入札で、昨年6月のような公共下水道(汚水管渠)工事の制限付き一般競争入札は16件あった。これらのうち、実に12 件が最低制限価格と同額の落札で、12件中8件では同額のフダが複数入り、くじ引きで落札者が決定されている。
前出、市内業者の言を信じるなら、少なくとも昨年度の公共下水道工事では官製談合が蔓延していたことになる。…続きは本誌に