『糖尿病黄斑浮腫に対する硝子体内注射』
2018年09月27日
■医師データ
新潟大学医学部卒。秋田赤十字病院、佐渡総合病院、京都府立医科大学助手、南部郷総合病院、新潟大学医歯学総合病院助手などを経て平成18年に開業。眼科専門医。
糖尿病網膜症は糖尿病の3大合併症の一つで、わが国では成人の失明原因の上位に位置している。その糖尿病網膜症の1病態である黄斑浮腫に対しては近年、注射による新しい治療法が効果的とか。そこで今回は黄斑浮腫に対する新しい治療法を取り上げる。解説は笹川眼科の笹川智幸院長にお願いした。
「近年、優れた新薬の登場もあり、糖尿病の管理は向上しています。しかし依然として糖尿病網膜症は本邦の大きな失明原因です。今回は糖尿病網膜症の1病態である、黄斑浮腫に対する治療法についてご紹介します。
糖尿病網膜症ではさまざまな生理活性物質が産生され、血管閉塞による虚血、血管新生による出血やそれに伴う網膜剥離など複雑な病態を呈します。中でも網膜の大切な中心部が『むくんでしまう』黄斑浮腫はかすみや歪みを起こし、視力低下に直結する重要なものです。黄斑浮腫は糖尿病網膜症の早期を含めた様々な病期に発症します。従来はレーザー光線や硝子体手術で対処されてきましたが、反応しにくい例もあり治療の難しい病気です。
2014年から保険適応となった、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤の硝子体内注射は国際的な多施設の臨床研究でも優れた結果を示しており、現在黄斑浮腫に対しては第一選択の治療法となっています。今までなかなか改善が得られなかった患者さんが、1回の治療の後、速やかに良好な視力を示すことも日常で経験されるようになりました。…続きは本誌に