”怪しげな”宗教団体に振り回された村上市美術館売買問題
2018年07月27日
村上市が個人から購入した不動産問題がモメている。その額、1億円超。一部市民は「不当だ」、「市は余計な税金を使った」と監査請求も行っている。だが、7月に入り、事実なら、市は大金を払って市民を救ったことになるような話が飛び込んできた。「事実は小説より奇なり」となるか? 情報収集を開始した。
温泉街に異彩を放つ建物
〈控え室で最後のタバコを勧めると、大久保は軽く一息吸い込んだ。その指は、震えていなかった。刑務官に反抗したり暴れたりすることなく、無論、引きずられて連行された事実もない。大久保の死刑執行も、一連の儀式の中で滞りなく終わった。〉
「教誨師」(堀川惠子著、講談社刊)という本に、連続殺人犯・大久保清元死刑囚が刑を執行される直前、教誨師が見たその様子を筆者が描写したものだ。死刑囚の「最後」に立
ち会う宗教者を教誨師という。
7月6日、「麻原彰晃」こと松本智津夫元死刑囚ら7人のオウム真理教幹部の死刑が執行された。各種の報道によれば、元死刑囚らが、執行の直前に暴れたり抵抗したりしたことはなかった。静かに、刑場の露と消えていったようだ。
観光面では村上市の一等地とも言える瀬波温泉街。いくつもの温泉旅館が沿岸の国道沿いに立ち並ぶ。ここから北上すれば、国の名勝天然記念物(県立自然公園)に指定されている
笹川流れが眼前に広がる。澄み渡った碧い海、きれいな白砂、荒波に浸食された奇岩・怪石、岩礁や洞窟など、変化に富んだ風光明媚な海岸を楽しむことができる。
村上の観光拠点となるのが瀬波地区と言えよう。ところが同じ瀬波地区に、巷で心霊スポットと恐れられる場所がある。すずきケ池ホテルだ。かつては「宗教団体と思われる白装束集団がウロウロしていた」といった怪情報もある。廃墟と化した同ホテルに突入し、YouTube にアップするツワモノ、キワモノもいる。
そんな瀬波温泉街に、一際異彩を放つ建物がある。それは、観光案内所の目の前にある。所有者は村上市。昨年までは新潟市の美術工芸会社が「香藝の郷美術館」を運営していたものだ。
市所有だから、市がこの会社から購入したことになる。この売買を巡り、市内はスッタモンダとなっている。先に記したように、購入金額に異論を唱えると同時に、「道路や橋を作
るための用地買収ではなく、用途を決めないままに市が買ったことも解せない」(元市議)という。当然、議会では納得しない議員が市を追及し、一部住民は監査請求までした。
村上市の読者以外は、事の次第が理解できないはずなので、この問題を時系列で解説する(参考文献「サンデーいわふね」)。
2016年6月20日、「香藝の郷美術館」を所有する新潟市の会社経営者H氏が市に対して購入申し入れ。
同年9月10日、市が不動産鑑定士に右物件の鑑定を依頼。
同年9月30日、右鑑定の結果を市が受領。鑑定額は総額9260万円。
2017年4月26日、H氏が市に対し、「1億3千万円で交渉してきたが、鑑定評価が低いので、最終協議の結果、某団体に売却した方が良いとの合意に至った」とする旨を報告。
同年5月26日、同じ不動産鑑定士が特殊価格として1億998万円(税別)と鑑定した意見書を市が受領。
同年8月8日、市議会全員協議会で、土地建物取得について報告。
同年8月15日、1億1500万円(税込)で購入する議案等を9月議会に提出。
同議会において賛成多数でこの議案が可決。
瀬波にマイナスになるなら市の介入も…
ざっと流れを記した。「特殊価格」などがスッタモンダの一因になっているが、ここでは説明を省く。
登記簿によれば、土地は2017年11月15日売買、同24日移転登記、建物が同年12月22日売買、同29日に移転登記がそれぞれ完了している。1億1450万798円(税込)で売買された。市の取得理由はこうだ。
「瀬波温泉の入込客数は減少傾向であり、何らかの活性化策を講じることが地元からも求められている現在、温泉街の中心に位置する当該物件を活用して新たな魅力の創出に取り組むことが、今後の観光振興に資すると判断されるため」
参考文献によれば、H氏はこの間、「先行して美術館を1億5千万円で購入したいという某団体がある」とか、「市に1億3千万円でぜひ購入していただきたい」などと市と交渉していたようだ。
なるほど、なかなか強かなH氏と言える。交渉上手とも言えそうだ。
「私が所有している不動産を某団体が買いたいと言っている。それでもいいのか? そう言って買い取り価格を吊り上げたと推測することもできますよね」
そうとしか思えない胡散臭さがプンプンとする。だが、この案件は、「地元の区長や温泉組合(瀬波温泉協同組合)の皆様のたっての希望」(今年6月定例会の高橋邦芳市長答弁)だったというのである。…続きは本誌に