『過活動膀胱は見極めが大事』
2018年06月27日
■医師データ
新井啓。新潟大学医学部卒。新潟大学医学部泌尿器科入局。同大腎泌尿器病態学分野助教、同病院講師を経て平成27年5月、かめだ泌尿器科クリニックを開院。医学博士。
頻尿の原因の一つに過活動膀胱があるが、この病気は専門医でないと診断が難しい。診断自体を誤ってしまうと、適切な治療効果を得られないばかりか、他の疾患を見逃すことにもなりかねない。今回は、過活動膀胱の診断や治療について取り上げる。解説は、かめだ泌尿器科クリニックの新井啓院長にお願いした。
「抑えがきかないような、我慢できない尿意を突然感じることはありませんか? このような状態を尿意切迫感といい、尿漏れまで起こしてしまうことを切迫性尿失禁と言います。この尿意切迫感を有し、おしっこを漏らしてしまった、おしっこが近い状態(頻尿)があったら過活動膀胱かもしれません。40歳以上の7人に1人が症状を有しているとされており、男性にも女性にもみられます。
正常の膀胱は尿がたまってくるに従い尿意が少しずつ現れ、徐々に強まり、ある程度までは我慢することができます。ところが過活動膀胱では異常な膀胱の収縮(おしっこをしたい感じ)が、まだおしっこがたまっていないのに急激に起こり、切羽詰まった尿意を感じます。最悪の場合は我慢の限界を超えて尿が漏れてしまいます。頻尿もしばしば伴いますが、大切なのはこの尿意切迫感の有無で、これがないと過活動膀胱の可能性が低くなります。
脳卒中やパーキンソン病などの中枢神経の疾患が原因になることがあります。男性では前立腺肥大症に合併することがあったり、女性では骨盤底筋が
弱ったりすることも原因の一つです。原因不明のことも多々見られます。
過活動膀胱の診断は目に見える形では困難です。レントゲンや血液検査などではわかりません。尿意切迫感があるのかを慎重にお伺いして、他の疾患がないかを見極めて診断を行います。泌尿器科の外来では検尿で膀胱炎や膀胱がんなど他の疾患がないかを診断します。次に超音波検査でおしっこが正しく排出されているかどうかを診断します。排尿後も多量のおしっこが膀胱に残っている場合は、おしっこの残りを減らす治療が優先されます。おしっこが排出されない状態が長引くと、腎臓の機能を損ねる可能性があるからです。
治療では生活習慣を見直すことも指導します。…続きは本誌に