野党の罵詈雑言に勝った花角の”人柄選挙”
2018年06月27日
意外とシンプルな選択だったのかもしれない。政策だ何だも大事だが、その前提として「この人なら」とまず分かってもらうことが選挙では重要だった。相手方に対する批判や、中傷に近い攻撃は一時的にはウケる。だが最終的には逆に忌避されることもある。素朴な素人集団が声がデカいプロ集団を負かしたような、そんな不思議な選挙だった。
前代未聞の粟島スタート
5月24日、知事選の告示日朝8時、花角候補は選挙戦のスタート地点、粟島を高速船で出航。予定どおり8時55分に村上市の岩船港に到着した。同港の駐車場には自民党の斎藤洋明衆院議員や同市の高橋邦芳市長らのほか、100人を超える出迎えの人が並んだ。この日の朝、まだ雨がほんの少し残っていたが、傘もささずに候補者を待つ人も多かった。
接岸した高速船のタラップを降りる途中、花角候補は港に並んだ出迎えの人々を見て、
「うわー、こんなにいっぱい」と声を上げた。もちろん、いわゆる動員がかかって港に来た人も多いわけだが。出迎えの中に既知の顔を見つけると、同候補は満面の笑みで、「来てくれてたんですか」と握手を交わした。
これが花角候補の実質的な選挙戦のスタートだった。同候補は岩船港の駐車場で挨拶した後、第一声の会場である新発田市に向かった。粟島から選挙戦を開始し、新発田で第一声など県知事選や、同じく全県を選挙区とする参院選でも聞いたことがない。
粟島からのスタートについて、花角候補を支援した同級生グループの一人はこう言った。選挙が終わってからの談話だ。
「いやハラハラしましたよ。だって船が欠航しないとも限らない。当然、天候はしっかり確認して行ったとは思うのですが、当日は小雨模様だったでしょ。何事も起こらなかったからよかったし、選挙に勝ったからよかったようなものです」
花角候補は自民党、公明党の支援を受けていた。たいてい自民党の候補は新潟市の白山神社で出陣式を行い、ここから選挙戦をスタートさせるのが常だ。同候補の選挙にかかわった民間の関係者はこう言う。
「白山神社で出陣式、そこからスタートだけは避けたかった。出発地点の候補地はいくつかあったんです。山古志や大火があった糸魚川、あるいは粟島と同じ離島で、候補者の故郷である佐渡など。粟島は花角さん自身の思い入れもあったと思います」
別の選挙関係者はこう言う。
「花角さんは副知事時代、粟島に行くという約束を果たせずにいたんですね。それから島の自然や島民、そして粟島馬との交流などを通じて子どもを元気にする、『しおかぜ留学』について関心を寄せていました。そうした理由から粟島がスタート地点になったようです」
投票日前々日の6月8日午後6時、花角候補が街頭演説を行ったのは阿賀町津川だった。粟島浦村の人口が370人ほどなら、阿賀町は1万1千260人ほど。選挙の定石では、投票日の2日前は大都市に繰り出し、いかに多くの有権者に顔を見せ、握手をして浮動票を獲得するかが鍵。…続きは本誌に