本県上場企業 株価・財務の徹底研究
2018年05月28日
本連載では、新潟県に本社を置く全ての上場企業(「新潟上場企業」または「県内上場企業」という。)の株価や財務に関連する各種指標を算定し、様々な切り口で新潟上場企業の問題点を炙り出した。第1弾として前号(5月号)では、PBR(株価純資産倍率)のランキングを行った。
第2弾となる、本号では近年注目を集める財務指標であるROE(自己資本利益率)や財務の安定性の指標となる自己資本比率のランキングをし、その結果を検討した。
ROE(3期平均)のランキングでは、第1位が太陽工機(16・2%)、第2位が福田組(15・5%)、第3位が北越工業(15・2%)となった。これらROEが高い銘柄は2017年の株価パフォーマンスも良好であった。
自己資本比率では、第1位がポラテクノ(87・7%)、第2位が同率(85・0%)でハードオフコーポレーションとセコム上信越となった。銀行業を除く県内上場企業の平均値は57・1%(東証一部上場会社の平均で約30%)と高く、全体的に財務の安全性が高い企業が多いが、逆にROEの上昇には不利に働くことが課題となる。
はじめに
2018年5月までの株式市場概況(日経平均株価)
2018年の干支は戊戌(つちのえいぬ)であり、「戌(いぬ)笑い」という相場格言があるように、その年の相場は好調を示すと言われている。その格言通りに2018年に入って株式市場は相変わらず活況を呈した。日経平均株価は、前年の大納会(2017年12月29日)の2万2764円から1月23日に一時節目となる2万4000円を突破した。
しかし、その後2月に入り米国株式市場の調整から、日経平均株価も再び2万2000円を割り込み、2月14日は2万1154円で引け、高値から3000円近くも下落する値動きの荒い市場となっている。その後安値では押し目を拾う投資家もあり相場も落ち着きを取り戻し、2万3000円に近付く場面もあり、相場も持ち直したかに見
えた。
3月に入り米大統領の輸入制限表明や日銀総裁の出口発言が加わり、日経平均は再度年初来安値の2万1154円をあっさり割り込み、ザラ場(場中)の安値2万0347円を付けた。その後の4月から5月においては、日本企業の業績好調に裏打ちされるように、日経平均株価も持ち直し、2万3000円をうかがう展開となった。
今後の展開としては、国際情勢において米朝会談という大きなプラス材料がある半面、トランプ大統領によるイラン核合意の破棄や中国との貿易摩擦はどうやら長期戦となりそうだ。その行方次第では、今後も、米国株式市場あるいはトランプ大統領に振り回される展開が予想されそうだ。
本号ではROE(株主資 本利益率)と自己資本比率を検討する
本連載の表題にある「徹底研究」の対象は新潟上場企業(県内上場企業)の市場株価と財務数値に関するものだ。県内上場企業が現在直面している株価・財務に関連した問題点を特定し、1つ1つ解決していくための資料を提供することを意図する。そのために、可能な限りデータに基づく大局的かつ客観的な分析を行ったうえで諸問題を
検討し、それに対する処方箋も提示するよう努める。
県内に主たる本社がある県内上場企業は、2018年5月末現在で37社を数え、それらは東証第一部、第二部およびJASDAQ市場のいずれかに上場している。多くの県内上場企業で共有する総論的な問題点と個別企業が直面する特有の各論的な問題点の大きく2つに分けて検討する。
総論的な問題点としては、まず本誌前号(5月号)ではPBR(株価純資産倍率)のランキングに関連した内容を扱った。特に、PBRランキングによって、株価が割安に放置される状態であるバリュートラップの問題を検討した。依然として、県内上場企業ではバリュートラップにある企業が多い。しかし、一部でバリュートラップからの脱却に成功した企業もあり一筋の光明が見えた。
本号では、財務の安全性を示す指標の自己資本比率のランキングに関連した考察を行い、さらに近年注目を集める財務指標であるROE(自己資本利益率または株主資本利益率)のランキングに関連した内容を扱う。市場株価における騰落率(リターン)との関係にも興味深い結果が得られており、将来の株価予測といった投資判断の資料としても有望だろう。
なお、市場株価や他の財務関連の数値は断りがない場合、主にYahoo!ファイナンス(https://finance.yahoo.co.jp/)や各上場企業の有価証券報告書等から取得している。
5月に入り、2018年3月期の決算発表や決算短信の公表が相次いでいるが、財務数値を引用した有価証券報告書は2017年内において決算期末となるもので、若干古い数値を使用しているがご了承願いたい。遅くとも6月末を過ぎれば、2018年3月期の有価証券報告書が出揃うので、それ以後は更新された財務データを使用する予定だ。
「伊藤レポート」の衝撃
2014 年8 月に公表された「伊藤レポート」とは、一橋大学大学院商学研究科の伊藤邦雄特任教授を座長とする経済産業省のプロジェクトによる最終報告書「持続的成長への競争力とインセンティブ—企業と投資家の望ましい関係構築」
(http://www.meti.go.jp/press/2014/08/20140806002/20140806002-2.pdf)のことだ。…続きは本誌に