新潟市を財政危機に陥れた”平成の大合併詐欺”
2018年05月28日
新潟市が前代未聞の財政危機に陥っていることは本誌でも再三取り上げてきた。11年前に政令市になったものの期待に反して県外企業の進出がさっぱりで、人口も着実に減少。その結果、深刻な税収減に陥っている。しかしながら、そもそも政令市に移行する前段階の広域市町村合併自体が間違いだったとの指摘がある。仮にそれが事実ならば、篠田昭市長の犯した罪はあまりにも重い。
首長たちの“合併特例詐欺”
さる関係筋がため息交じりにいう。
「企業誘致が一向に進まないことや人口減少はある意味において仕方ありません。それが新潟市の都市としての力量なのでしょうから。しかし現在の新潟市の財政危機は人為的な要因が非常に大きい。端的にいえば、合併建設計画が市の財政状況を一気に悪化させたということです」 (議会関係者)
新潟市における合併建設計画は市町村合併後の長期的な「まちづくりの基本方針」として位置付けられ、合併時には平成17年度から同26年度までの10カ年を計画期間としていた。合併建設計画を推進するための財源が合併特例債で、これは全国を挙げて進められた「平成の大合併」の際に国が設けた合併推進策だ。合併特例債は平成17年度末までに合併した市町村が新たな庁舎の建設費などに充てることができ、しかも返済額の7割を国が負担することから市町村にとっては実に“おいしい話”だった。
篠田市長も「これは使わぬ手はない」とばかりに飛びつき、合併特例債といういわば手土産をぶら提げて周辺市町
村の首長らに合併への参加を呼びかけた。篠田市長は周辺市町村との合併実現を自らの手柄のように話しているが、合併に応じた首町たちは別に篠田市長の求心力に引き寄せられたわけではなく、単に合併特例債を使って地元にハコモノをたくさん建設したかっただけの話だ。
別の関係筋がいう。
「国が合併特例債の7割を負担してくれるとはいっても借金には違いありませんからね。各市町村の首長たちもその時点で10年後に完済しなければならないことは分かっていたわけですが、編入合併されて失職すれば自分が責任を問われることはないとの計算があったのでしょうね。結果、彼らは無謀な公共投資を実行したのです」(別の議会関係者)
いざ合併してしまえば「後は野となれ山となれ」ということらしい。しかし当然ながら新たに建設した公共施設を維持管理するためには莫大なコストがかかる。ハコモノは作っておしまいというわけにはいかないのだ。
前出の関係筋が続ける。
「新設した公共施設にしても市民の方々のニーズや利便性に寄与しているとはいいがたい。少子高齢化が急速に進んでいますから、そもそも存在意義に疑問符が付くような施設が山ほどあります。結局、何の意味もなく負の遺産を背負ったようなものですよ」 (同)
2割の面積に6割の人口が“一極集中”
新潟市の総人口は昭和40年から増加基調となり、同55年に73万人、市町村合併を経た平成22年にはピークの81万人余りに達した(※国勢調査および国立社会保障・人口問題研究所の調査に基づく)。
しかしそれ以降は減少局面に入り、今年4月1日現在の推計人口は80万1298人にまで減少している。
計8区の推計人口の内訳は以下のとおりだ。
・北区…7万4795人
・東区…13万6354人
・中央区…18万2847人
・江南区…6万8589人
・秋葉区…7万6145人
・南区…4万4631人
・西区…16万1604人
・西蒲区…5万6333人
最も人口が多いのが中央区で、新潟市民の約22%が同区に居住している。この中央区と東区、西区といった旧新潟市域とほぼ重なるエリアの人口を合算すると48万805人となり、総人口の6割が旧新潟市域に住んでいることが分かる。
前述のように中央区は計8区の中で最も人口が多い半面、意外なことに最も面積が狭い区でもある。以下のとおり中央区の面積は37平方㌔㍍で、市全体の面積の3%程度にすぎない。なお、カッコ内には1平方㌔㍍当たりの人口密度を記した。…続きは本誌に