『ロコモティブシンドローム』
2017年07月25日
はすいけ整形外科院長
蓮池 尚文 氏
■ 医師データ
山形大学医学部卒。山形大学医学部付属病院整形外科入局。北里大学、酒田病院、三友堂病院、燕労災病院、山形大学付属病院などを経て平成20年に開業。
健康志向の昨今、“健康寿命”という言葉を耳にする機会が増えてきた。これは人々が健康で自立した生活ができる状態をいう。今回は、そのカギを握るロコモティブシンドロームを取り上げる。解説は、はすいけ整形外科の蓮池尚文院長にお願いした。
「ロコモティブシンドローム(以下ロコモ)とは、筋肉や骨、関節、軟骨などの運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、立つ、歩くといった機能が低下している状態をいいます。
これに関連して昨今、健康寿命という言葉がよく使われるようになりました。健康寿命とは、人々が健康で自立して生活できる上限の年齢のことをいいます。人は誰でも老いていくものですが、ロコモが進行して寝たきり状態や車いす状態になると、誰かの介助や支援がなければ生活できなくなります。こうなると健康寿命といわれる期間は終わりです。
私が気になっているのは、わが国の平均寿命はどんどん延びているのに、健康寿命に限っていえばほとんど延びが見られないことです。現在の日本人の平均寿命は男性が80.2歳、女性が約86.6歳です。対して健康寿命は男性が71.2歳、女性が74.2歳。ということは、男性で約9年、女性で約13年、誰かの介助や支援がないと生活できない、健康ではない期間があるということです。
数年前に比べて、この期間は確実に長くなっています。ロコモが進行して寝たきりになると、内臓にも影響を及ぼすようになる負の連鎖が起こります。その間、医療費や介護費がかかりますから、これが国の医療行政を圧迫します。こういった健康ではない期間をできるだけ短くするように行政も手を尽くしていて、日本整形外科学会などが中心に啓蒙活動を行っています。世間でロコモの概念が急速に広がっているのもこのためです。
では、具体的なロコモの対策といいますと、これはロコモの前段階で食い止めるということに尽きると思います。まずは、自分はロコモになりかけているかもしれないと気づくことです。これは『ロコモ25』という簡単に判定できるチェックシートがありますから、それを実践してみることです。『ロコモ25』は日本整形外科学会が公認するロコモチャレンジというインターネット上のサイトでダウンロードできます。また、病院やクリニックなどにも置いてあることが多いので、それらを活用してください。…続きは本誌に