『進歩する白内障の眼内レンズ』
2017年06月27日
■医師データ
新潟大学医学部卒。秋田赤十字病院、佐渡総合病院、京都府立医科大学助手、南部郷総合病院、新潟大学医歯学総合病院助手などを経て平成18年に開業。眼科専門医。
先月号で白内障の基礎知識と手術を紹介したが、今月号では、日進月歩の進歩を遂げている眼内レンズについて取り上げる。手術を受ける患者の仕事や趣味などのライフスタイルに合わせて、いろいろなものが選べるようだ。解説は前回に引き続き、笹川眼科の笹川智幸院長にお願いした。
「先月号で白内障の手術などについてお話ししましたが、今回は瞳に挿入する眼内レンズについてです。
眼内レンズにはさまざまなタイプのものがあります。ほとんどが3㎜以下の小さな切開から挿入できる柔らかい素材(アクリル、シリコーンなど)が使われています。これらは一度挿入されれば生涯使用可能で、特殊な場合を除いて再手術を必要としません。
これまでは主に単焦点の球面眼内レンズが使われていましたが、最近では視覚の質を向上させるため、着色レンズ(術後青っぽく見えるのを防ぐ)、非球面レンズ(レンズ周囲のゆがみを抑える)、乱視矯正レンズ(もともとある角膜乱視の矯正)、多焦点眼内レンズ(老眼を緩和する)も使用されています。
特徴としては着色や非球面効果は像のコントラストが改善し、特に瞳孔が大きくなる暗い場所での見え方が従来の球面レンズより良くなります。乱視矯正眼内レンズは裸眼視力(眼鏡をつけない状態の視力)を上げるために、多焦点眼内レンズは今まで解決できなかった近くも遠くも見えるという老眼対策として開発されています(現在は保険適用外です)。
中でも多焦点眼内レンズは生活の利便性から今多くの注目を浴びています。一方、夜間の光の見え方や細かい像が単焦点に比べてはっきりしなくなる懸念もあります。特にいつまでも車の運転を続けたい人や精密な作業をする方には適用か熟慮が必要です。希望される場合は主治医とよく相談いたしましょう。…続きは本誌に