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2024年11月24日

村上市が指定管理者を提訴 両者の「苦渋」

2017年05月27日

地域住民が自治体を提訴する例は珍しくない。しかし、その逆は異例。村上市が公共施設管理者への提訴を決めた背景には、指定管理者制度の問題点も見え隠れする。

 

訴訟という名の濁流

 

村上市の公式サイトに、商工観光課が担当する〈むらかみの観光情報〉というページがある。

 

今年4月1日、そのページで紹介されている「道の駅笹川流れ(夕日会館)」について奇妙な一文が掲載された。〈(有)笹川流れ夕日会館との間で締結した協定に基づく本施設の指定管理期間は、平成29年3月31日で終了しています〉

 

この文に対する解説は一切なし。事情を知らない人は「一体なんなのだ」と思うだろう。「市民が運営する企業を、市が提訴するとはいかがなものか。百条委の設置など、問題解決の場を別のかたちでつくることもできたのではないか」

 

4月18日、村上市議会臨時会が開かれた。議案は2つ。市から有限会社笹川流れ夕日会館への訴訟提起と、その訴訟費用の増額補正。

 

議案審議の中で、本間清人市議が高橋邦芳市長に向け、先のように質問した。

「このようになったことは遺憾には思うが、私どもの取りうる手法としては、極々丁寧に今日までの作業に当たってきた」

 

市長はそう答え、提訴は止むを得なかったとの見方を示した。

 

議長を除く25人の市議で訴訟提起の採決が行われ、結果は賛成24・反対1。反対したのは先の本間清人市議のみ。関連する補正予算( 弁護士委託料140万円)も同様に可決された。

 

有限会社笹川流れ夕日会館は平成5年、同名施設の運営のために旧山北町で設立された。当時は指定管理者制度の施行前。旧山北町と同社との間では、同施設の管理運営業務委託契約が結ばれていた。

 

p80

旧山北町は平成20年に村上市と合併。それに伴い、管理運営の委託者が旧山北町から村上市に変わった。

 

平成23年、村上市は夕日会館に指定管理者制度を導入。有限会社笹川流れ夕日会館が施設の指定管理者となった。その指定管理のあり方を巡り、村上市と同社との間では、平成26年度末にも一悶着があった。

 

同社への訴訟提起において村上市は、同社が夕日会館を権け ん原げんなく占有していると主張。同社に施設の明け渡しを求めることになった。同社は市と争う姿勢で、本稿校了日時点で和解の様子は見られない。

 

夕日会館は道の駅に登録されており、観光案内センターや物販コーナー、カフェ、レストラン、24時間使用可能なトイレなどを備える。海沿いの立地を生かした展望台も設置されている。

 

旧山北町地域の観光拠点施設を舞台に、何が起こったのか。

 

レストランの休業が招いた議会への波紋

 

有限会社笹川流れ夕日会館は今年3月末日まで、同名施設の指定管理者に指定されていた。現在はその任が解かれている。

 

同社の指定管理の第1期と呼ぶべき期間が、平成23年4月1日〜平成26年3月末日の3年間。

 

村上市は当初、平成26年4月1日以降も連続して同社を指定管理者とする方針だった。ところが、施設内のレストランが年始から休業していることが分かり、方針を転換。指定管理の協定に沿った運営が為されなかったとして、市は別の指定管理者を探すことにした。

 

「夕日会館の運営については平成26年の2月から4月まで、市議会で喧々諤々の議論が行われました」(市内識者)

 

議事録を読むと、レストランの休業は従業員の体調上、致し方ない事情もあった。…続きは本誌に

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