斎場問題に葛藤する上越市
2017年03月27日
昨年10月、上越市は柿崎区にある頸北斎場を廃止し、老朽化により建て替えを予定する上越斎場に統合する構想を示した。地域協議会を中心とした頸北地区の住民たちは「廃止ありきの構想だ」として徹底抗議した。これを受けて市は頸北斎場の廃止を撤回し、上越斎場への集約構想も白紙に戻した。しかしながら市内の斎場を集約できないと合併特例債の活用が困難になるという。
頸北斎場の廃止を公表
現在、上越市内には居多の上越斎場と柿崎の頸北斎場の2つの斎場がある。
上越斎場は1985年に市が整備した。火葬炉4基を携え、2015年の火葬件数は1990件。1日に11件の火葬が可能だという。
一方、頸北斎場は1992年に柿崎、吉川、大潟の旧3町の広域事務組合が出資して整備した。火葬炉3基と動物炉1基を携え、2015年の火葬件数は377件と動物火葬422件。1日に4件の火葬が可能だという。
同施設の特徴は市内で唯一、動物火葬ができることだ。動物火葬が目的で隣県からも訪れる人がいるという。昨今のペットブームが追い風となり、頸北斎場の動物火葬数は人の火葬件数を上回っている。
上越斎場は現在、築32年が過ぎ、火葬炉や空調などの老朽化によって毎年約1千万円が修繕にかかるという。
市は、昨年10月の厚生常任委員会で、「頸北斎場を廃止。上越斎場を隣接する土地に建て替え、市内の斎場を新上越斎場に統合する。2021年の完成を目指す」という方針を示した。
ある市議はいう。
「上越斎場建設事業は、新市建設計画に初めから入っていたわけではなかった。新市建設計画の第2次財政計画を策定した際に斎場事業を盛り込み、有利な起債が取れるということで始まった」
市は合併特例債の発行期限である平成36年までに上越斎場を建て替えたい意向から、2012年の新市建設計画変更の際に新たに上越斎場建設事業を財政計画に盛り込んだ。
前出氏は「市は合併特例債を発行できる一番簡単な方法を選択したのではないか」と推測する。
つまり財政主導による頸北斎場の廃止案だ。
合併特例債の対象条件を簡単におさらいしておく。
1、新市の一体性の速やかな確立を図るための公共的施設の整備
2、新市の均衡ある発展に資するために行う公共的施設の整備
3、新市の建設を総合的かつ効果的に推進するために行う公共的施設の統合整備
これらの条件に鑑みると、頸北斎場を廃止し、市内の斎場を上越斎場に集約することが、最も容易に合併特例債の発行要件を満たすと推測できる。
昨年10月、頸北斎場を廃止する方針を示した市は、当該地域の柿崎区地域協議会だけに諮問を求めた。そして頸北斎場建設時に組合を組織していた吉川、大潟区については説明だけに止まった。
「頸北斎場を建てたときは市と3町が出資しながら協議した。市は合併したからといって柿崎区にだけ諮問を求め、吉川、大潟区は蚊帳の外というのは乱暴だ」(地域協議会員)
市によると地域協議会は、「地域協議会員は地域住民から選出され、市長その他の市の機関により諮問されたものについて地域の意見をとりまとめ、市長に意見を伝えるための機関」だという。
住民の反対を受け廃止撤回
昨年11月、頸北地区の住民と村山秀幸市長が直接話し合うキャッチボールトークが開催された。住民からは「頸北斎場の存続を求める」意見が相次いだ。…続きは本誌に