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2024年11月24日

日本海横断航路船購入トラブル 貨物船がフェリーに化けた!

2017年03月27日

この”事件”だが、試運転もしないまま、後になって「およそ5千万円」と言われた韓国のボロ船を5億円で購入する契約を結んだことが直接の発端だった。その後、前知事が選挙戦から撤退するという、とんでもない騒動にまで発展した。売主が買主を訴えた裁判も和解が成立、調査委、監査委の報告も出て、前知事や前副知事らに対する処分も決定した。「これにて一件落着」のはずが、県議会は、”野党”自民党中心の暴風雨で大荒れ模様だ。

 

貨物船がフェリーに化けた、実に安直な理由

 

なぜだったのか…? 平成26年度まで、日本海横断航路には貨物船を就航させることになっていた。それが突如として人も貨物も運ぶフェリーに変更された。そのため船の購入経費は倍になり、中古フェリーを確保するため四苦八苦せざるを得なくなった。ここが混乱の出発点ではなかった。貨物船からフェリーへの変更は、「経済界の意向」があったのだという。

 

経済界から提言でスタート

 

p30

県の重要プロジェクトとされた日本海横断航路だが、「新潟の拠点性を一層高める」と、期待も大きかった。総合拠点港の新潟港は日本海側唯一の中核国際港湾だ。対岸諸国との交流で、本県は長い歴史と実績を持つ。中国東北部やロシア極東地域と首都圏の中間に位置する地理的特性もある。こうした地域と新潟港を結ぶ航路を開設し、官民共同で物流、人流の拡大を目指す。それが日本海横断航路だった。

 

この取り組みは「平成19年、経済界からの提言を契機に進められてきた」とされる。同年2月、新潟経済同友会が『日本海横断航路開設に期待する』とする提言を発表した主な内容は以下のよう(本誌で要約)。〈ロシア・ザルビノ港―韓国・束ソ ク草チ ョ港―日本・新潟港を国際フェリーで結ぶ日本海横断航路開設で、県や新潟市などが必要な支援策の検討を進めることを強く要請したい。新航路の開設で、新潟が日本海側の一大拠点地域となるよう、多いに期待する〉

 

この提言は経済同友会に設置された国際問題委員会(池田弘委員長)での検討を経て取りまとめられた。提言があった翌月の平成19年3月、経済同友会や商議所、ERINA(環日本海経済研究所)などの呼びかけで設立されたのが東アジアフェリー航路投資(同年9月に北東アジアフェリージャパンへ社名変更)だった。

 

その名のとおり、この会社は日中ロ韓の4カ国で設立する日本海横断航路の運営会社に対し、日本側の資金を集めるために設立された。この会社が平成23年5月に社名変更し、新潟国際海運となった。後に県から3億円の出資を受け第三セクターとなり、船購入で失態を演じたのがこの会社だ。設立の当初は純粋な民間会社だった。

 

経済界のツケを県に回す

 

日本海横断航路は過去に2回失敗した経緯がある。平成21年6月、新潟県側と韓国、中国、ロシアが出資する合弁会社が事業主体となって、新潟とロシア・ザルビノ、韓国・束草を週1回結ぶ「三角航路」が営業運航を開始した。だが旅客、貨物ともに低迷。フェリーを提供した韓国企業とのトラブルもあって、航路は休止となった。

 

2回目は平成23年で、8月に今度は公募した民間会社の貨物船で新潟東港とザルビノ港を結ぶ貨物船が運航した。だが船の運航が不安定であったり、集荷がままならなかったりで、同年度限りで休止となった。

 

平成19年から同24年3月まで、新潟国際海運(NIS、Niigata International Shippingの略)は、頓挫したとはいえ、日本海横断航路事業に関わっていた。航路が休止し、同社は収入の道を断たれたようなもの。だが県が業務を委託することで、同社は今日まで営業を継続することが可能だった。

 

日本海横断航路の船購入トラブルについて、特別調査委員会と監査委員会がいずれも本年2月に報告書を明らかにした。このうち後者は航路がとん挫した後のNISについて、〈収益の面では、ほとんど県からの受託業務が占めていた会社である〉としている。売上高のほとんど100%が県からの受託料だったということだ。

 

ある新潟市内の会社代表者はこう言う。

 

「新潟の経済界は言い出して失敗した日本海横断航路だが、失敗のツケを県に回したようなもの」

 

監査委報告書によれば、NISは設立以降、単年度収支は赤字が続いていたという。そして例の船を購入する契約を締結したほぼ1カ月後の平27年9月末、NISの繰越利益剰余金は、マイナス8千900万円余だった。

 

なぜ県は公募することもなく、こんな会社を日本海横断航路の事業者に選定してしまったのか…?二つの報告書はいずれもこうした事情には触れていない。

 

〝事件〟の発端

 

日本海横断航路の〝船購入事件〟だが、試運転もしないまま、後になって「およそ5千万円」と言われた韓国のボロ船を5億円で購入する契約を結んだことが直接の発端だった。…続きは本誌に

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