本誌シミュレート もし上越新幹線が新潟空港に乗り入れていたら
2017年02月27日
来月号で掲載予定の「上越新幹線 新潟空港乗り入れ」に関する識者座談会で、異口同音に発せられた一言が印象深い。「もし今、上越新幹線が新潟空港に乗り入れていたら…」。約30年前、乗り入れ機運は今以上に盛り上がりを見せ、新潟の発展を語り合っていたという。議論ばかり続けた結果、雲散霧消してしまった。もし今、乗り入れていたら…。問題に詳しい新潟市在住の公務員氏の協力を仰ぎ、シミュレートしてみた。県選出の国会議員、県知事、各首長、県議そして市議の方々に是非ご検討願いたい。
乗り入れが実現した 新潟市をシミュレーション
先日公表された東京航空局による速報では、平成28暦年の新潟空港全体の利用者数は増加した。
一方で、インバウンド・アウトバウンドの効果も空港活性化の施策の効果も乏しかったようで、国際線の伸びは前年比マイナスとなった（11万４０９９人＝10・６％減）。この結果、国内線・国際線合わせて２年連続１００万人割れした。仙台空港（国際線18万７２２２人＝８・３％増）、茨城空港（国際線16万４０９５人＝12・８％増）といった近隣空港の国際線に大きく水をあけられた。
平成26年度の新潟県ＧＤＰは宮城県に追い越された。平成27年国勢調査においても人口が宮城県を下回った。本県は、新潟空港も上越新幹線も、経済も人口も明るい話題が乏しい。まるで真っ暗なトンネルの中を彷徨っているかのようだ。期待され続けてきた上越新幹線の新潟空港乗り入れが、もしも今、実現していたら、果たして新潟県はこんな惨めな現状に甘んじていたのだろうか。
もし泉田知事時代の２０１０年度（平成22年度）初めに乗り入れが実現していたとしたら、新潟県や日本の鉄道・航空は、次のようになっていたかもしれない…とシミュレートしてみる。
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平成22年某月、新潟空港に上越新幹線が乗り入れた。待ち望んだ瞬間だ。
新潟空港には、空港駅から新幹線に乗る旅行客でごった返している。当面の行き先は万代、古町といった中心市街地だろうか。今までは想像もつかなかった国際色豊かな光景が、新潟市で見られるようになった。
数の増えた旅行客に対応するため、新潟駅連続立体交差事業が早期に着手された。新幹線・在来線の同一ホーム乗り換えは予定通り平成25年度に実現。庄内地域との往来が活発になった。
高架全面開業も予定通り平成27年度に実現した。万代側と駅南側との一体的なまちづくりが進み、新潟駅からの二次交通が利便性を増した。
新幹線の空港乗り入れのため、平成11年に全線廃止となった新潟交通電車線の鉄軌道は、その撤去を免れた。南区と中央区を結ぶ日常交通としてのみならず、白山前駅から古町、万代橋を通り、新潟駅まで軌道を延伸することで、移動の利便性が高まると再評価されたからだ。ＢＲＴ案も出たが、新潟交通電車線の新潟駅延伸案にアッサリ寄り切られた。鉄道に耐えられる設計の万代橋に、ようやく鉄道が走ったのだ。
鉄道空白地帯になっていた新潟市南区の人口減少は抑制された。鉄軌道周辺の再開発が行われ、駅周辺には商業施設や新たな住宅地が造成されたためだ。
今後は電車線をさらに延伸させ、駅南─ビッグスワン─市民病院─県庁─関屋駅へと結ぶ「循環線」の建設が始められるようだ。
空港は活気付いていたはずだ
乗り換えることなく空港が利用できるとあって、首都圏からの新潟空港利用客が急増した。鉄道の乗り換えを必要とし、混雑のために長時間、搭乗手続きを待たされる羽田空港や成田空港の利用を、本音では避けたがっていた群馬県、埼玉県からの新潟空港利用者が急増したのだ。
コンパクトな新潟空港は、手続き時間が少なく、高齢者や子ども連れ、外国人には特に好評だ。国内で初めて新幹線が空港に直結した新潟空港の存在は、国内外に大きなインパクトを与えたようだ。
利便性の良い新潟空港と上越新幹線は年々利用者が増加。上越新幹線の運行本数も増えた。空港アクセスが改善されただけでなく、首都圏との往来も容易になった。多くの利用者の声を反映して、多言語案内に対応し、荷物も広めに置ける新型車両が導入されたのだ。
国内外からの利用客が増えた新潟空港は、路線の強化が図られ、国内線・国際線とも本数が増えた。
既存のソウル、上海、ハルビンの各線に加え、ロシア極東路線が定期便として再就航。中国の首都・北京、中国高速鉄道が東西南北で交差する大都市・武漢、観光地として人気のある香港といった中国路線、さらにはモンゴル、東南アジア、ホノルルなどの国際線も加わり、インバウンド効果の波に乗って、新潟空港はさらに活気付いた。…続きは本誌に
