大学教授誌上討論 人口減少時代に求められる地方大学の役割
2017年01月27日
大学抜きに地方創生を論じることはできない。大学が地域に活力を与えるからだ。だが地域は大学の使い方を知らず、大学は地域に目を向けていないと指摘されている。そして、高校生は東京の大学を目指したがる。地方の人口減少を食い止めるため、政府は地方大学の振興を総合戦略に盛り込んだ。
創生=地方大学の振興
政府は昨年12月22日、地方創生の総合戦略の改訂版をまとめ、「まち・ひと・しごと総合戦略(2016改訂版)」を発表した。この改訂版の中では「大学」の文言が64個も出てくる。地方創生の鍵を大学が握ることを示唆していると言えよう。
総合戦略の中長期目標は、
①2060年に人口1億人程度を維持、
②2050年代に実質GDP成長率1・5〜2%程度維持の2点を定めた。
基本目標は次の4つ。
①地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする
② 地方への新しいひとの流れをつくる
③ 若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる
④ 時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守るとともに、地域と地域を連携する
この二番目の主要施策の1つに、「地方大学の振興」を謳った。施策の概要はこうだ(本誌で一部編集)。
〈地方の若い世代の多くが、大学入学時と卒業時に東京圏へ流出している。要因は、地方に魅力ある雇用が少ないこと、地域ニーズに対応した高等教育機関の機能が地方では十分とはいえないことが挙げられる。地方に魅力ある雇用が少ないことから、東京圏の大学から地方企業へ就職するという流れも大きくならない。
地方大学は地域に開かれた学校づくりを引き続き進める。地域とのつながりを深化させ、地域産業を担う人材養成など、地方課題の解決に貢献する取組を促進する必要がある。
地方大学への進学、地元企業への就職や都市部の大学から地方企業への就職を促進するため、奨学金を活用した大学生の地元定着、地方公共団体と大学との連携による雇用創出・若者定着に向けた取組を推進する。
学校を核として、学校と地域が連携・協働した取組や地域資源をいかした教育活動を進め、郷土の歴史や人物を取り上げた地域教材を用い、地域を理解し愛着を深める教育により、地域に誇りを持つ人材の育成を推進する。
人材育成の観点では、地域産業を担う高度な専門的職業人材の育成や地元企業に就職する若者を増やし、地域産業を自ら生み出す人材を創出する。地域に根差したグローバル・リーダー育成の取組を推進する必要もある。
東京における大学の新増設の抑制や地方移転の促進などについての緊急かつ抜本的な対策を、2017年夏を目途に方向性を取りまとめる。〉
そして、2019年度末までに達成させたいとする次の数値目標を定めた。…続きは本誌に