巨大企業・森永製菓を猛追する八海山の甘酒戦略
2016年12月27日
100億円市場に過ぎない甘酒業界だが、大化けする可能性が高まってきた。昨今の健康ブームが追い風となっており「飲む点滴」と評されるだけに、中高年層の人気はうなぎ上り。江戸時代は「夏の栄養ドリンク」として、夏の風物詩だった歴史もある。先行していたのは、菓子メーカー大手の森永製菓だが、ここに来て、八海山の猛追が顕著となってきた。
急成長を続ける甘酒市場
健康ブームの追い風を受け甘酒市場が急成長を続けている。インスタントラーメン業界の5,000億円市場、米菓業界の2,500億円市場には遠く及ばないが、市場規模は100億円を超えたようだ。先陣を切っていた森永製菓はこの6年間で甘酒の売り上げを倍増させている。
日本酒の売り上げがピークの半分以下に減少した清酒業界がこの機運を見逃す筈がない。ノンアルコールの甘酒だが、原料となる酒粕や米麹の扱いにおいては菓子メーカーより技術の蓄積が違うというプライドもある。京都の月桂冠、兵庫の大関、本県の八海山が続々と参入してきたのは自然の流れといえる。
なかでも、八海山の伸び率は群を抜いている。平成23年8月期にわずか4,200万円にすぎなかった甘酒の売り上げが同28年3月期には6億4,500万円と前年の倍増を果たしているからだ。27年に完成した新工場への設備投資が奏功している。なにせ、応じきれないほどの注文が殺到していたからだ。
森永製菓の甘酒とは分母は違うが、6年で倍増と1年を待たずの倍増とでは勢いが明らかに異なる。
この違いを業界通はこう分析する。
「甘酒は米麹と酒粕を原料とする二通りの製造方法がありますが、消費者は酒粕より米麹の方が健康に良いとのイメージを持っています。森永は酒粕と米麹の両方を原料としていますが、八海山は米麹一本やりです。
売り方も違います。森永製菓は菓子メーカーだけに、菓子メーカーそのものの売り方です。紙パックの甘酒から健康に良いとのイメージが伝わりますか?お笑い芸人のイモトアヤコのコマーシャルにしても、子供受けを狙ったのでしょうが、主力購買層の中高年の主婦に健康に良いとのイメージが伝わるとは思えませんね。
その点、八海山はペットボトルを使ったシンプルなデザインですが、高級感を醸し出すのに成功しています。爆発的に売れている飲みきりサイズをペットボトルで発売した着眼も見事です」
魚沼という片田舎に育った南雲二郎社長だが、センスには定評がある。
八海山が甘酒市場を席捲?
40年間、甘酒造りを手掛けてきた森永製菓だが、八海山が本格参入したのは、わずか6年前のこと。その以前、主流であった酒粕からではなく、米麹を原料とする甘酒を瓶詰めにして売り出したところ、リピートの多さに驚いたからだ。リピートが多いのは、商品力があることの証明でもある。…続きは本誌に