保護者必読! 大卒より高卒が有利な時代になる!?
2016年11月28日
初めて職に就いた人の4割が非正規雇用…。平成24年の「就業構造基本調査」がまとめた衝撃の事実だ。24歳までの大卒では、男女いずれも2割が非正規で働いているとも。「親なら知っておきたい学歴の経済学」を今年7月に発刊した西川純・上越教育大教職大学院教授は、「大卒より高卒という選択肢がベターになる時代が来る」と力説する。
大学進学はハイリスク!?
大学・短大等進学率は、全国で55%、本県は47%だ。
約30年前、本誌の創刊間もないころ、県内上場企業の社長にインタビューしたときのことだ。
「私は大卒を採用し続けています。大卒が珍しい時代からずっと。新卒の7割が大卒。優秀な社員がたくさんいるんです、我が社には」
この社長は「大卒」を強調していた。当時の本県は大学進学率が2割。「大卒」が珍しい時代だった。だから「大卒=優秀」と言えた。エリート扱いされていた。大学を卒業すれば、少なくとも中卒・高卒よりは有力な会社に就職できる可能性が高まり、給料も待遇も将来的に約束されていた時代だったわけだ。
今や2人に1人が大学・短大に進学する時代。大卒が巷に溢れている。受験雑誌に偏差値が載らない「Fランク大学」でも卒業すれば大卒。よって、大卒だからといって即採用してくれる企業はなくなった。現実に、旧帝大卒、早慶卒でさえ、就職できない学生が出てきている。
冒頭でも触れたように、24歳までの若年労働者のうち、大卒では男女とも約2割が非正規で働いている。図①は、平成27年8月28日に行われた税制調査会で配布された資料から抜粋したものだ。
正社員であれば、高卒・大卒とも男女問わず、年齢とともに給料が上がっている。だがパート・バイトは、高卒・大卒とも、年齢が上がっても給料はほとんど上がっていないことが分かる。非正規雇用の年収は平均170万円(国税庁、平成26 年分民間給与実態統計調査)。どこかで正社員になれなければ、一生この年収で暮らしていくことになる。
大学に進学すると、4年間で学費等は国立大で約300万円、私立大で400万~500万円、同医歯薬だと約2千万円はかかる。
「大学4年間にかかる費用は、生まれてから高校を卒業するまでにかかった費用とほぼ同じくらい」
と西川教授は指摘する。
企業の給料がそんなに上がっていないのに、大学の授業料は上昇一途。保護者に余裕がないため、奨学金を借りる学生は少なくない。奨学金利用者は、一人平均約400万円を借りる。現在、約360万人が返済中だが、うち17 万人が3ヵ月以上延滞しているという。非正規で働いていたり、給料の低い会社で働いていたり、そもそも働いていないから返済できないのだろう。
大学に進学したはいいが、莫大な投資の割にリターンが小さい可能性がある。その可能性は今後、ますます高くなると西川教授は警鐘を鳴らす。では、我が子の進路はどう考えるべきか。同教授に聞いた。
2020年は教育大改革の年
西川教授は1959年東京都生まれ。筑波大学教育研究科修了(学校教育学博士)。都立高校教諭を経て、上越教育大にて研究の道に進み、2002年より現職。全国に『学び合い』(一般的に言うところの「アクティブ・ラーニング」)を広める講演と著書を多数出している。
本稿を読み進めるに当たり、西川氏の2冊の著書の冒頭に記された「一問一答」を要約・抜粋する。「高卒より大卒が有利になる」かもしれない理由がより分かりやすくなるだろう。…続きは本誌に