BRT社会実験で露呈した新潟市の本末転倒体質
2016年09月27日
悲鳴の裏付け
昔のバスは車掌が安全を確認し、運転手に「発車オーライ」と告げて出発した。11月、新潟市はJR新潟駅前近くでBRTの専用走行路と、島式ホームの社会実験を行う。それには道路の使用・占用の許可が必要だが、同市はその申請も上げず社会実験の実施を告知していた。これではバスが出発してから、「発車オーライ」と言っているようなものだ。
その混乱も昨年9月下旬に連接バスの快速運行が始まったあたりでほぼ解消された。以後、大きなトラブルもなく現在に至っている。「無事これ名馬」と言いたいところだが、もっと深刻な問題が明らかにされた。
BRT・新バスシステムステムは中心市街地に人を呼び込むためのツールの一つだったはず。だが皮肉なことに、結果は真逆となってしまった。新潟交通では今年5月末、路線別、バス停ごとの乗降客数を月ごとに集計したデータを初めて公表した。
6月、このデータを基に新潟日報が古町バス停の乗降客数を積算した結果を公表している。BRT・新バスシステム開業後の昨年10月から今年3月まで、前年に比べ、すべての月で乗降客数は減少し、減少幅は1万6千人から5万7千人だったという。
市民団体も独自で集計を行い、昨年10月から今年2月までで、ほぼ新潟日報と同じ結果を得たという。「市民団体の集計では、開業後5カ月間で古町が125万8千人から105万人と20万8千人の減、本町は61万人から50万人へと11万人の減であり、古町と本の合計では5カ月間で31万8千人も減少するというショッキングなものとなっています」(五十嵐完二市議、共産党、東区。市議会5月定例会での一般質問より)
BRT・新交通システムの導入で、逆に「客足が遠のいた」と悲鳴を上げたのが中心市街地の商業者らだった。本町六商店街振興組合の理事長は、昨年の市議会12月定例会に「BRT事業の中止」を求める請願書を提出。今年1月、古町・本町地区の10商店街団体は連名で事態の打開を求める要望書を篠田昭市長に提出した。
直行便に続く専用走行路
昨年12月の冬ダイヤに続き、新潟交通は今年2月にダイヤ改正を発表した(春ダイヤ)。BRT・新バスシステムでは、郊外から中心市街地に向かう際、交通結節点で乗り換えが必要だ。この煩わしさが古町や本町へ客足が遠のく一因でもあった。
前述した中心市街地からの”悲鳴”を受け、3月からの春ダイヤでは、郊外から古町や本町に乗り換えなしで利用できる直行便(ダイレクト便)が拡充された。平日のラッシュ時間帯のみ運行していたダイレクト便が、平日の昼間、土日・祝日にも運行されるようになった。
だが増便にも限界があるらしい。
「2月に行われた市議会と新潟交通及び執行部との意見交換の場において、新潟交通から”ダイレクト便について現時点で限界であると考えている”と発言がありました。郊外路線の便数を減らす結果となるダイレクト便の過度な設定は、現段階では課題があると考えています」(市議会6月定例会での篠田市長答弁より)
ダイレクト便に限界があるなら、次なる一手が専用レーンの整備だ。新潟市では数年以内にJR新潟駅と古町の間にBRT・新交通システムの専用走行路を整備するという。これにより、軌道系の公共交通並みに定時性と速達性が確保される。そして古町・柾谷小路地区といった市街地中心部への客足がよみがえるという。
役所の幹部はこんなふうに言っている。…続きは本誌に