『痔の話』
2016年09月27日
中村 茂樹 氏
■医師データ
新潟大学医学部卒。平成2年、腹腔鏡下胆嚢摘出術を国内に先駆けて行う。以後、米、仏、フィンランドで内視鏡手術を研修。平成20年に県立加茂病院(副院長)を退職し、同年4月にプラーカ中村クリニックを開業。
日本人の約3人に一人は“痔主”の時代。国民病と言っても大げさではなさそうだ。今回は、そんな痔の話。解説はプラーカ中村クリニックの中村茂樹院長にお願いした。
「肛門外科には痔の患者さんが、老若男女を問わず多く来院されます。おもな症状は、便や紙に血が付いた(出血)、いぼが出る(脱出)、肛門が痛む(痛み)といったものです。このほか膿が出る、かゆいなどの訴えもあります。これらの症状をきたす肛門疾患を総称して『痔』といっていますが、実際にはいくつかの種類があります。
まずトップバッターは痔核(いぼ痔)でしょう。外の皮膚部分にできれば外痔核、奥の粘膜部分にできれば内痔核と言います。外痔核には、ときに内部に血栓(ちまめ)ができて強く腫れたり、痛んだりすることがあります(血栓性外痔核)。坐薬と内服薬による保存治療が原則ですが、痛みが続けば簡単な外来手術の方が手っ取り早いこともあります。
内痔核が大きくなると、排便時の出血や肛門からイボの脱出がみられます。これも保存治療が原則ですが、程度により外来の小手術や、入院して根治手術を行うこともあります。
痔核と並んで多いのが裂肛(切れ痔)です。肛門の皮膚は薄いうえに、排便で強い力が加わるので裂けやすいのです。手足のひび割れと同じく、痛みを訴えます。
肛門近くの皮下に膿がたまって強い痛みと発熱を伴うのが肛門周囲膿瘍です。これが破れたり、手術で切られた後、皮膚と直腸の間にできた『ろう孔』(難治性のトンネル)が痔ろうです。これは薬では治らないので、手術が基本です。…続きは本誌に