『副鼻腔炎をあなどるなかれ』
2015年11月27日
■医師データ
新潟大学医学部大学院卒。ドイツ・ウルム大学留学、富山医科薬科大学(現富山大学)助教授などを経て’82年に開業。医学博士。日本耳鼻咽喉科学会専門医。新潟県耳鼻科医会会長などを歴任。
鼻水や鼻づまり、嗅覚障害など、不快な症状が続く副鼻腔炎。慢性化してしまうと完全な治癒がなかなか難しくなる、やっかいな病気だ。さらには、悪化すると様々な合併症を伴うことも…。今回は副鼻腔炎を取り上げる。解説は大野耳鼻咽喉科医院の大野吉昭
院長にお願いした。
「鼻は複雑な構造をしています。鼻の穴は小さいですが、その内部は鼻腔といって広い空間になっており、さらに鼻腔の周囲には顔面骨の内部に空気をためるいくつかの空洞ができていて、それを副鼻腔といいます。鼻腔と副鼻腔は細いトンネルでつながっています。
副鼻腔炎とは、副鼻腔にバイ菌がはびこることにより引き起こされた炎症です。炎症を起こすと細いトンネルが腫れて閉塞するため、バイ菌が外に出にくくなります。そうなると副鼻腔にどんどんバイ菌が繁殖して悪化していきます。膿のような鼻汁で鼻が詰まり、鼻汁がのどに落ちてくるため咳や痰の原因になったり、嗅覚障害、さらには頭痛や歯、目の痛みなどに悩まされる人もいます。
かぜなどをきっかけに副鼻腔炎を発症することが多く、免疫力の弱い子供のほか、糖尿病などの慢性疾患を抱えている人もバイ菌に対する抵抗力が弱まっているので注意が必要です。
副鼻腔炎の診断には、前鼻鏡という器具を使用して鼻腔を診察し、さらに内視鏡を用いて内部をよく観察することもあります。粘膜の腫れ具合、鼻汁の量や性状、鼻ポリープの有無などを調べます。また、鼻汁を採取し、原因となっているバイ菌の種類を調べることも大切です。必要に応じて画像診断なども組み合わせることがあります。
治療ですが、原因となっているバイ菌の種類に合わせた抗菌薬を投与する薬物療法のほか、たまった鼻汁の吸引、鼻洗浄、薬液の吸入(ネブライザー)などを行います。炎症の程度がひどく、鼻ポリープができるなどして薬物療法でも治らない場合には、これらを取り除くための手術に移行する場合があります。…続きは本誌にて