被害続出 学生が食い物にされるブラックバイトの実態
2015年10月27日
ブラックバイトという言葉をご存じだろうか?
振り込め詐欺の片棒を担ぐような“ブラックなバイト”という意味ではない。ブラックバイトとは、深夜の長時間労働や賃金の未払いなど過酷な条件で働かせるアルバイトのことで、主な被害者は学生だという。県内でもすでに被害報告が上がっており、労働組合が実態把握と雇用環境の改善に乗り出している。過酷なブラックバイトの実態をリポートする。
新潟薬科大・男子学生が告発
9月7日、県庁内の県政記者クラブで記者会見に臨んだ新潟薬科大学に通う男子学生・Aさん(19)は、自らが体験したブラックバイトの実情を以下のように切り出した。
「私は去年3月から塾講師のアルバイトを始めました。しばらくは上司の指示どおりに業務をこなしていましたが、夏期講習前に塾の授業の進度や、私が教えている生徒一人一人の定期テストの点数などの情報をパソコンに入力し資料を作成しました。
私は友達と一緒に資料を作成したのですが、彼が”家でこの仕事をやっているけれど給料が出ないんだよね”と話したのを聞いて、私もそうだなと思いました。それをきっかけに私は会社による仕事のさせ方に疑問を抱くようになりました」
当時、Aさんが受け持っていた生徒は計4人。Aさんは4人分の資料を作成したのだが、完成させるまでに一日8時間作業で3日かかった。にもかかわらず手当はいっさい支給されなかったという。
Aさんが講師のバイトをしていた塾は新潟薬科大のある同じ秋葉区に所在する。
夏期講習が終わった9月の終わり頃、バイト先の近くに労働基準監督署があったことから、「行政っぽい施設でもあるし相談に行ってもいいのではないかと思い」(Aさん)窓口を訪れたという。
Aさんが続ける。
「私が担当職員にバイト先での仕事のさせ方について疑問を抱いていることを説明させていただいたところ、担当のその方から”それはちょっとおかしいですね”との返答をもらいました。とはいえ、そのときは単に相談に乗っていただいただけで終わりました。それから6カ月ほどして1年の契約期間がちょうど終了するにあたり、私が会社側に辞める意思を伝えると、上司から”人手不足なので辞めないでくれ”と言われました」
Aさんは「学業との兼ね合いもあるので辞めたいのです」と頭を下げたが、これに対して上司は「子供じみてんだよ」などといった高圧的な言動におよんだという。
このため困ったAさんは再び労働基準監督署に出向き、どのように辞めたらよいのかアドバイスをもらい、それに従って会社側に改めて掛け合ったところ、契約どおりに辞めることができたという。
一方、会社側の賃金不払いは在宅での資料作成に対してだけでなく、出勤時の報酬に対してもしかりだという。
「入社説明会のときに授業開始前の20分、30分前に来て前回の授業の復習テストを作ることになっているとの上司からの指示があったので、授業開始30分前に出勤して言われるまま作成しましたが、その分の給料は発生しませんでした。コマ給といって授業時間90分相当の給料しか支払われないのです」
Aさんがバイトをしていた塾の時給は1,000~1,200円。Aさんは週4日勤務していた。
仕送り減少でバイトは必須
Aさんがバイトをしていた塾で授業本体以外の時間外手当の不払いが常態化していたその根っこには、ズサンきわまりない出退勤管理があった。塾には出退勤時間を打刻するタイムカードはなく、Aさんを含むバイトの学生らは自分の授業開始時間を紙に記すことしか指示されていなかった。いってみれば単なるメモにすぎない。
このためAさんが授業前に出勤して復習テストを作成したという証拠がなく、会社側に不払い賃金を請求するための決め手が決定的に不足していた。…続きは本誌にて