『ピロリ菌除菌のススメ』
2015年09月28日
杉村 一仁 氏
■医師データ
杉村一仁。新潟大学医学部卒業。新潟大学医歯学総合病院助手、同病院講師、新潟市民病院消化器科副部長などを経て平成26年5月に杉村クリニックを開業。
胃がんの主な原因として近年注目されているピロリ菌。感染者のおよそ12人に一人が将来的に胃がんを発症するという、驚愕のデータも出ている。そこで今回は、ピロリ菌について取り上げる。解説は杉村クリニックの杉村一仁院長にお願いした。
「ピロリ菌は正式にはヘリコバクター・ピロリという名前の細菌で、ヘリコプターのようなべん毛をもっているのが特徴です。胃の中は強酸性の環境ですが、この菌は独自に酸を中和する機能を備えているため、胃の中で生き続けることができます。そのため長年にわたって胃内部をあらし続け、胃炎や胃かいよう、胃がんなどを誘発するやっかいな菌です。
富山大学医学部の試算によると、ピロリ菌に感染している人が生涯に胃がんを発症する割合は8%とされており、重大な胃がんのリスクファクターとして厚労省もピロリ菌の撲滅に本腰を入れ始めました。現在では、感染者の除菌は保険適用で行われています。
日本人の感染率ですが、10代から30代くらいまでは10%~20%前後ですが、40代以降は急に増え始め、60代以降は80%ほどになっています。ただ、最近は衛生環境が整っているので、将来的には感染者の割合は減っていくものと見込まれています。
では、ピロリ菌を除菌するとどのくらい胃がんを抑制できるのかお話しします。30歳までに除菌を行うとほぼ100%、40歳までに除菌を行うと90%台後半、50歳までに除菌を行うと90%以上、胃がんを抑制できるとされています。以降は徐々に下がってきますが、それでも除菌の効果は高いといえます。とくに50歳までに除菌すれば90%以上で胃がんを抑制できるわけですから、早いうちの除菌が推奨されています。
除菌の保険適用についてですが、一つ条件があります。…続きは本誌にて