元少年A手記「絶歌」の扱いに対応が真っ二つの県内図書館
2015年08月27日
6月に刊行され賛否両論が渦巻く神戸連続児童殺傷事件の加害者・元少年Aの手記『絶歌』の取り扱いをめぐって、県内図書館の対応が真っ二つに分かれている。凄惨な内容が記されていることもあり、被害者の人権や遺族感情に配慮して所蔵しない方針を打ち出した図書館がある一方で、「利用者の知る権利に応える」として購入に踏み切った図書館もある。どちらの言い分もうなずけるところがあるが、表現・出版の自由と遺族感情への配慮のはざまで図書館関係者は苦悩している。
〝殺人よりも更に悍お ぞましい行為〟
6月10日、『絶歌』(太田出版)なる手記が刊行された。著者は1997年に神戸連続児童殺傷事件を引き起こして2人を殺害、3人に重軽傷を負わ
せた当時14歳だった〝元少年A〟、またの名を酒鬼薔薇聖斗。
切断された男児(11)の頭部を中学校正門に放置するとともに、耳まで切り裂かれた口に犯行声明文を挟んだ残虐性や特異性は犯罪史上稀に見るもので、世間を震撼させた。
その”元少年A”が犯行から18年経った今、事件を引き起こすまでの経緯、逮捕から社会復帰に至るまでの過程を手記にして世に送り出したことに対して、被害者遺族は強い反発を示した。なにせ元少年Aは遺族から何ら了承を得ることなく勝手に出版に踏み切ったのだから。
少年Aに殺害された土師淳くんの父親・守さんはマスコミの取材に対して、以下のように怒りをあらわにしている。
「今回、本が出てから5日経った時点でも、太田出版から何の連絡もありませんし、本も届いていません。もちろん読んでいないし、読む気にもならない。我が子が殺された描写を、誰が読みたいと思うでしょうか。彼は自分がやったことを顕示しているだけで、反省していないと言うしかありません。
殺人を犯した人間が、被害者側に断りもなく、本を出版して金儲けするなど信じられない。犯罪者が犯罪を誇示しているようなもので、これを出版の自由とは言えないと思います」(週刊新潮6月25日風待月増大号より)
被害者の一人である淳くんと少年Aは顔なじみで、無垢な淳くんを「亀を見に行こう」と言って誘い、通称「タンク山」で絞殺。その後、少年Aはノコ
ギリで首を切断、淳くんの頭部を自宅に持ち帰って弄んだ揚げ句、酒鬼薔薇聖斗の名で犯行声明文をしたため、それを口に咥えさせて自身が通っていた中学校の正門前に放置したのだった。
今回刊行された手記で、元少年Aは淳くんの頭部を自宅に運び、それを風呂場で洗いながら〈僕は殺人よりも更に悍おぞましい行為に及んだ〉と記してもいる。遺族にとって到底読むに耐え難い内容を含む手記、それが元少年Aの手による『絶歌』といえよう。
県立図書館は収集方針に沿って非購入
元少年Aの手記『絶歌』が刊行されると、関係機関はさまざまな反応を見せた。
事件が起きた地元の兵庫県立図書館は「地元の図書館として、遺族の感情や人権に配慮せざるを得ない」などとして、この本の貸し出し・複写を制限する方針を表明。これに続いて神戸市立図書館も『絶歌』を購入しない方針を打ち出した。
さらにこうした自粛ムードは書店業界にも広がった。…続きは本誌にて