公選法違反 新人の芽を摘みかねない検察の暴走か
2015年08月27日
五泉・東蒲の県議選に立候補し、落選した宮崎伸。選挙後に母と共に公選法違反で逮捕起訴された2人の裁判が結審を迎えた。元衆院議員の坂上富男弁護士は、この裁判を「あまりに苛酷、痛々し過ぎる」と述べた。検察による立証は完全とは思われず、こうした摘発が続けば、新人の立候補はますます困難になり、政治活動の自由が脅かされるのではないか(文中敬称略)。
市議選に回るはずが…
4月3日告示、同月12日投開票の県議選で、五泉市・東蒲原郡区(定数2)から新人の宮崎伸(32)が出馬した。伸は同区選出だった宮崎増次元県議(民主)の二男。3人が立候補した選挙戦では自民と無所属の現職2人が当選し、宮崎は2位との差1千300票ほどで落選した。その直後、地元では「宮崎伸は秋の市議選に回るだろう」といった観測が一般的だった。五泉市議会は10月に改選を迎える。
ところが状況は一変した。県議選の投票日から1カ月ほどたった5月15日、宮崎伸ら4人が公職選挙法違反(買収)の容疑で逮捕されてしまった。有権者にモノや金を渡して投票を依頼したといった内容ではない。容疑は「運動員に報酬を支払うことを約束して戸別訪問をさせ、選挙後に報酬を支払った」というもの。
選挙運動で報酬支給が可能なのは、ウグイス嬢などごく一部だけだ。選挙の運動員に報酬を支払うことができれば、金持ちだけが有利になってしまう。事前、事後を問わず、選挙運動への報酬支払いは公選法違反となる。
一方、公選法は「戸別訪問の全面禁止」を定めている。住宅や事業所などを連続して回る行為は、「買収や利益誘導など、不正行為を招きやすい」とされるからだ。日本独特という「戸別訪問の全面禁止」について、選挙でのインターネット利用と同様、「欧米のように解禁すべき」という議論が根強くある。
しかし現実は相当厳格に「戸別訪問の全面禁止」が適用されているようだ。
「総務省の見解によると、〝投票を得るためにという主観的意思を持って(住宅や事業所など)2軒以上連続で訪問する行為は戸別訪問に該当する〟とされています」 (県内の政党関係者)
こうなると選挙運動期間とされる告示日以降ばかりでなく、それより前でも公選法違反に問わるケースが続出してしまいそうだ。告示日前、特定の立候補予定者へ投票を呼びかけるのではなく、あくまで政治活動として「後援会加入」を勧誘するための戸別訪問もアウトになりかねない。
当然ながら「後援会加入」の勧誘は、特定の立候補予定者を当選させたい、すなわち「投票してほしい」という〝主観的意思〟を持って行われる。こうした〝思い〟と、連続して訪問した事実が立証されれば、立派な公選法違反事件になってしまう。
被告は容疑を否認
5月15日に逮捕されたのは県議選の候補者だった宮崎伸容疑者だけではなかった。選挙で出納責任者を務めた母の和子容疑者も逮捕された。選挙後、運動員に支払ったとされる”報酬”は36万2千400円。 受け取ったとされる側の2人も同じ日に逮捕された。2人は長岡市に本店を置く会社(S社)の代表者と役員だった。後者の役員が伸容疑者と小学校からの幼なじみで、こうした縁から同容疑者の選挙を支援することになったという。…続きは本誌にて