『精神疾患の増加は社会の大きな損失』
2015年05月27日
■医師データ
中垣内正和。新潟大学医学部卒。同大精神医学教室に入局。県立精神医療センター、医療法人佐潟荘副院長などを経て平成27年4月、ながおか心のクリニックを開院。
精神疾患の患者が増えている。一種の現代病といえるだろう。そこで今回は、社会問題化しているこの問題を取り上げる。解説は、ながおか心のクリニックの中垣内正和院長にお願いした。
「戦後経済成長期を経て、近年は国民の精神衛生の悪化が懸念されています。
2008年、うつ病通院患者は100万人を突破し、アルコール依存症、ひきこもり、摂食障害なども増えています。自殺者数3万人超えは14年間続きました。うつ病とアルコールは自殺と関連すると言われています。
ひきこもりの増加も深刻です。内閣府はすでに、ひきこもり70万人と発表していますが、近年は40歳を超えるケースが増加し、半数が40歳代の壮年層に達した都道府県まであります。日本経済の中核を担うはずの働き盛り年代の増加は、社会的に大きな損失です。
厚生労働省は長らく、がん、脳血管障害、心臓疾患を国民の3大疾患として重点対応してきましたが、精神疾患の増加を踏まえて、新たに精神疾患、糖尿病を加えた『5大疾患』としました。遅ればせながら、精神疾患が国民の健康の根幹にかかわる重点的疾患として追加されたのですが、実は5大疾患の中でも、うつ病、自殺、アルコール乱用、認知症などを含む精神疾患が一番多いことも判明したのです。
私は県立病院や民間病院に勤務し、この4月に長岡市シビックコア地区に開業いたしました。地元が長岡市ですから、これまでは出稼ぎに行っていた格好になりますが、そんな私が開業に踏み切ったのは、精神医療が混乱する地元のお役に立ちたいと痛感したからです。新潟県の精神科医不足は県の認めるところですが、なかでも中越での減少が際立っています。ひきこもり医は全国的にも僅少ですが、とくにアルコール依存症を診る医療機関が地域からなくなってしまいました。高校年代の若者を診るところも少ないことにも気づきました。…続きは本誌にて