田中角栄の怨念が残した長岡駅”幻の10番線”
2015年03月27日
JR長岡駅3階の下り新幹線ホームに、「幻の10番線」と呼ばれる不思議な空間がある。「新幹線は地域開発のチャンピオン」と謳いあげた田中元総理の壮大な夢の残渣である。東京―金沢を結ぶ北陸新幹線が開業した今、再び想いを馳せる。
“幻の10番線”は夢の結晶
北陸新幹線開業の1カ月前、誠心会第9期生の鎌田元康(長野市在住、79)は、30年ぶりに故郷の長岡を訪れた。
昭和43年、鎌田は、東急電鉄(東京本社)から北野建設(長野市本社)に出向した。営業職を3年経験したあと、子会社として創設された長野東急エージェンシーに移籍。昭和52年、角栄の秘書の遠藤昭司が顧問を勤める業界紙(東京本社)に転じた。
「死ぬ前に、どうしても見ておきたいものがあって長岡までやって来ました。それは、大恩ある田中角栄先生の夢の結晶ともいうべき“幻の10番線”です」(鎌田)
昭和47年11月、角栄は、運命の選挙といわれた第33回総選挙前の演説会で、「長岡~柏崎~直江津を北陸新幹線でつなぐ。その次に、秋田~青森を羽越新幹線でつないで見せます。これは私の夢だ。いや、夢じゃない、本当のことだ。必ず実現しますよ!」とぶち上げたのを鎌田は覚えている。
その鎌田の視線の先に、線路も架線もない長さ約450メートル、奥行き約6メートルの不思議な空間が延びている。白い安全柵で囲われた剥き出しのコンクリートの上には鳩の糞が散乱している。ホームに売店はなく、自動販売機のみが設置してある。JR長岡駅の新幹線ホームは2面2線で、中央に通過本線が2線通っている。下りの11番線は本線側にしか線路がない。ホームを挟んで反対側に、線路、架線とも敷設されていない空間が取り残されたようにあるのだ。上りの12番線ホームは、外側に11番線ホームと同様の高架橋を増築できる構造となっており、これらのホームは、いずれも1面2線にすることが可能となっている。
案内をした30代の駅員は、
「当駅は、2面6線という大きな配線になっています。これは将来的に上越新幹線の新潟より北のほう、つまり羽越新幹線まで延長する際に、長岡駅で待避や折り返し運転ができるように作られたものでしょう。羽越新幹線と北陸新幹線の乗り入れは、田中角栄先生の夢だったそうですね。もし、これが実現していたら、今頃、10番線を、柏崎・直江津方面の新幹線が発着していることでしょう。それを思うと残念な気がします」
現在、羽越新幹線は計画段階で、フル規格新幹線方式、ミニ新幹線方式、フリーゲージ・トレイン方式のどれになるかも決まっていないという。…続きは本誌にて