旅券返納フリーカメラマン 報道の虚実
2015年02月27日
シリア国境の取材を計画していた新潟在住のフリーカメラマン・杉本祐一氏が、外務省から旅券返納命令を受けた。杉本氏を否定する意見もあれば、取り上げた政府を非難する声もある。しかしフリーランスの杉本氏が旅券を取り上げられたのは、明らかに”狙い撃ち”であろう。全国を騒がせたこの事件は、ある新聞報道が引き金になっているのではないか。
朝日と日報、渡航計画を報道
1月25日、中東のテロ組織「イスラム国」の人質となっていたフリージャーナリスト後藤健二さんが殺害されたと見られる映像が配信された。この事件については、あえてここでは説明を控える。
そして日本国民のショックが覚めやらぬ中、2月4日付の新潟日報は、フリーカメラマンの杉本氏が同月27日にシリア国境付近の取材目的で現地に渡航計画であるという内容を報じている。
杉本氏はそれにさかのぼること10日前の朝日新聞新潟版の記事にも渡航計画を明かしているが、この時はほとんど話題にならなかった。
両紙の報じ方はトーンに差がある。朝日の記事は淡々とした内容だ。渡航の日程も明記されていない。一方で新潟日報の記事は、杉本氏の渡航に関して後藤さん殺害になぞらえたいという意図も見られる。渡航の日程にも触れている。杉本氏への取材で朝日に先んじられただけに、より濃い内容を意識したのだろうか。
「現地に滞在しなければ見えないものがある。後藤さんが伝えようとしたことは、自分が伝えたいことでもある」という杉本氏のコメントは、実際にどう編集されたか知らないが、読み手にとっては”この人は後藤さんの遺志を継ごうとでも思って現地に入るのか”という印象も受ける。
この記事を見て、驚き、呆れた市民が大多数であろう。
湯川遥菜さん、後藤健二さんの「イスラム国」による拘束事件は、1月中旬から毎日のようにメディアで流され、刻々と変化する動向を全ての国民が注視した。政府はテロリスト側と懸
命な交渉を続けたが、それもむなしく二人は殺害された。後味の悪さとテロリストへの脅威が日本国民に植え付けられた。
その直後だっただけに”後藤さんの遺志を継ごう”という新潟のフリーカメラマンに対し、憤慨する声が国民の多くを占めたのも無理はない。
ネット掲示板では、…続きは本誌にて