『ばね指』
2013年12月26日
富永草野病院
草野 望 氏
■医師データ
順天堂大学医学部卒。新潟大学整形外科入局。1993年に富永草野病院赴任と同時に(財)新潟手の外科研究所にて手指屈筋腱損傷の基礎的・臨床的研究を開始。2002年にワシントン大学整形外科(セントルイス)に留学。04年より富永草野病院にて手外科診療を行っている。
重症化すると手を握ることも伸ばすことも困難になり、手を使う作業ができなくなるなど、QOL(生活の質)が著しく低下する『ばね指』。今回はこの病気について取り上げる。解説は富永草野病院の上肢診療部長、草野望先生にお願いした。「ばね指とは腱鞘炎の一種です。はじめは手のこわばりや動かしづらいなどの症状ですが、これが進むと痛みが発生し、手を握ったときに引っかかるような感覚が現れます。この時、握った手を伸ばそうとしても伸びづらくなり、それでも無理に伸ばそうとすると、指がバネのように弾いて伸びる独特の症状が現れます。これが病名の由来です。
手の平の皮膚の下には指を曲げる時に必要な腱が通っていますが、さらにそれを、鞘のように覆っているのが腱鞘です。手を握ったり伸ばしたりするたびに腱が腱鞘の中をするすると滑るように動くわけですが、手を使いすぎて炎症がおこると、腱が膨らみ腱鞘の中を滑らかに動くことができなくなるのが様々な症状の原因です。
治療ですが、ごく早期の段階では鎮痛効果のある塗り薬や、添え木タイプの装具で固定して安静にするなどです。
症状が進んでいて、塗り薬や安静などで回復しない場合は、注射療法を考えます。この注射療法ですが、腱と腱鞘の隙間に注射で鎮痛効果のある薬を注入し、炎症を抑えるという治療で、最近は、これを第一に選択する先生が多いようです。
注射療法でも思ったような改善がみられない場合や、再発をする場合、手術を検討します。…続きは本誌にて