『ピロリ菌感染症の診断と治療』
2013年09月27日
中村 茂樹 氏
■医師データ
新潟大学医学部卒。平成2年、腹腔鏡下胆嚢摘出術を国内に先駆けて行う。以後、米、仏、フィンランドで内視鏡手術を研修。平成20年に県立加茂病院(副院長)を退職し、同年4月にプラーカ中村クリニックを開業。
胃がんや胃潰瘍の原因として、その存在が広く知られるようになってきたピロリ菌。日本人では、40歳以上の実に70%以上が感染者だとか。今回はピロリ菌感染症の診断と治療について取り上げる。解説はプラーカ中村クリニックの中村茂樹院長にお願いした。「ピロリ菌は1983年にオーストラリアのウォレンとマーシャルが培養に成功し、その後、実験や疫学調査の進展から今や胃がん、MALTリンパ腫、特発性血小板減少症などの原因であることも分かりました。日本人の感染率ですが、20歳代では25%どまりですが、40歳以上では70%以上と高いものになっております。ちなみに胃がんの患者さんは、ほとんどが感染しているといわれています。感染経路は糞便や井戸水、母親からの口移しの食事などの経口感染が原因であると考えられています。
ピロリ菌に感染しているかどうかの診断方法は尿素呼気試験、血液や尿の検査、検便などがあります。
これらの検査で陽性と判定された場合、将来のことも考えてピロリ菌を駆除するための治療を行うことが望ましいです。
治療ですが、プロトポンプ阻害剤と抗生物質2種類を7日間内服します。この治療で約70%の人が駆除に成功します。1回目で駆除されなかった人は、抗生物質の種類を変えて、さらに7日間内服の治療を行います。これで90%まで駆除が成功します。内服治療している間、食事や日常生活などで特に制限はありませんが、飲酒は控えてください。除菌に成功した場合の再感染は3年以内に10%以内とされています。
2回の治療でも駆除されなかった患者さんには、当院では定期的に内視鏡検査を受けていただく旨をお話しし、あまり心配なさらないようにお伝えしております。このピロリ菌感染症の診断と治療ですが、2013年から保険適用になりました。すなわち国が、ピロリ菌駆除を推進することで国民の健康を守ろうという表れだと思います。ただし、希望する人全員に保険が適用されるわけではありません。条件がありまして、保険が利くのは医療機関で胃内視鏡検査を受け、医師により慢性胃炎を確認された人だけが対象になります。慢性胃炎が確認されない人は全額自己負担です。…続きは本誌にて