─アパート取り壊しにあたって 大家が怯える“顔のない住人”─
2013年08月26日
アパートの住人は果たして誰なのか?
私たち調査業者への依頼案件は、その8割以上が浮気調査といっても過言ではありません。裏を返すと、残りの2割弱は男女間の愛情問題を抜きにした調査であり、家出人調査や企業調査、債権債務調査など多岐にわたります。そして時には今回紹介する立ち退き相手の調査依頼まで舞い込んでくることも…。
当事務所では浮気調査を5件、6件と掛け持ちするのは日常茶飯事であり、費用を捻出してご依頼をいただいただけに、調査結果はオセロゲームよろしくほぼクロ一色に埋め尽くされることがほとんどです。
そんなときには調査をしている私も、世の中の人たちがことごとく男女の愛憎劇に心を痛めているかのような錯覚にとらわれるのです。しかしながらこうした場面でふと浮気調査以外の調査依頼をいただくと、人の悩みは文字どおり十人十色だと気付かされます。当然のことながら〝色恋沙汰ばかりが悩みではない〞ということです。
今回の調査依頼者である中林加奈子さん(仮名・新潟市在住)は、お見受けしたところ年齢は60代半ばといったところでしょうか。
さて、中林さんからの調査依頼はというと、ご自身が保有している借家の住人について調べてほしいといいます。住人のことは大家さんが一番ご存じではないかと考えがちですが、さにあらず。
中林さんが事の経緯を話します。
「私の住まいは新潟市東区にありますが、親の代から西区に平屋2DKの借家を持っているのです。とはいえ築年数がすでに40年を超えており、老朽化によってあちこちに不具合が生じています。
そもそも昭和40年代に建築したとあって、現在の建築基準法の耐震基準をまったく満たしておらず、大地震が来れば倒壊の危険すらあります。このため早期に建物を取り壊さなければならないことから、住人の方に建物の明け渡しをお願いしている最中でして…」
今でこそ賃貸物件は所有者が不動産会社に管理委託するのが当たり前となっていますが、中林さんがお持ちの借家は不動産会社を介さず、親御さんの時代から個人で一貫して管理してきたといいます。昭和40年代に完成した古い物件であれば、このような管理形態はさほど珍しくないといえるでしょう。…続きは本誌にて