被災者への賠償にフタをしたまま原発再稼働にひた走る
2013年07月26日
東電に集団訴訟
東京電力福島第一原発事故で、福島県から新潟、山形、群馬各県に避難している被災者が、精神的苦痛や経済的負担を強いられたとして、1人当たり1100万円の損害賠償などを東京電力(以下、東電)と国に求め、集団訴訟することが決まった。各地裁を舞台に7月23日に開廷する。
賠償責任より再稼動優先
柏崎市に避難した原発事故被災者の相談窓口を引き受ける柏崎きぼう法律事務所の山本悠一弁護士に話を聞いた。
「柏崎市では10人以上の被災者が集団訴訟への参加を決めました。当初は6月中旬の提訴予定でしたが、予想外に希望者が増えたため、時期をずらしたものです。提訴に参加する被災者は、国と東電に対し、強い憤りと不信感をつのらせています」
一方で東日本大震災から2年3ヶ月余り、不自由な避難生活を強いられ続ける被災者らの声も集めた。
「東電は、我々の賠償請求の申し立てを、法律の専門家を表に立てて反論し、一切、和解に応じようとしない。今年6月に施行された“時効中断の特例法”は、被災者救済どころか、結果的には加害者であるはずの東電に、法律上の逃げ道を作ったとしか思えない」
「東電は、敗訴による賠償金を電気料金値上げに紛れ込ませて、国民に責任転嫁しようとする魂胆。そんなことをしなくても不動産、有価証券など10兆円規模といわれる東電の隠し資産を取り崩して賠償すべき」
当然ながら、いずれも厳しい指摘だ。
こうした被災者らの怒りの連鎖を一身に背負うことになった山本弁護士は
「原発事故の直後は、ADR制度(裁判外紛争解決手続き・以下、ADR)に期待をもって、被災者の皆さんの申し立てが続出しました。ところが、当初、3ヶ月程度で解決するものと考えていたにもかかわらず、半年~1年と時間が経過してしまい、もはや解決のメドも立たなくなりました。どちらかが条件を撥ねつければ、そこで終わり、というギリギリの状態です。その間、東電の対応は、被災者の置かれている状況や苦しみなど、まったく理解しようとしないどころか、自らが起こした事故に対する責任など微塵も感じていないものに終始。こちらが提出した賠償請求が和解案にまったく反映されないだけでなく、被災者の精神的損害については、月額10万円を超える賠償額すら提示されません。障害を持つ方の介護に従事されている被災者などには特例も認められるようですが、一方で福島市、郡山市、いわき市などの“自主避難者”については、大震災が発生した平成23年3月11日以降、現在までの賠償が行なわれるのではなく、23年度分のみとか、平成24年の一定時期まで、といったふうに、極めて限定的なものに留まっています。すなわち、国の示す賠償の指針に沿っていない和解案については一切、汲み取ってもらえないのが現状です。被災者の皆さんの胸中を思うと、十分な成果が見込めないまま、いたずらに時間だけが過ぎるのを待っていられない。集団訴訟は当然の結果です」と語気を強める。
ADRによる賠償請求の申し立ての中で東電側は、避難生活を契機に、精神的疾患や強度のストレスに苦しみながら亡くなった人の死亡原因と、過酷な避難生活との因果関係を、一切、認めようとしていない。…続きは本誌にて