『急性膵炎』
2013年02月28日
丸山診療所院長
波田野 徹 氏
■医師データ
信州大学医学部卒。新潟大学医学部第三内科入局。長岡中央綜合病院内科部長を経て平成21年に開業。医学博士。日本消化器内視鏡学会認定 消器内視鏡専門医。
悪化すると、立っていられないほどの痛みに襲われることもある急性膵炎。今回は、働き盛りの男性に多いといわれている、この病気を取り上げる。解説は丸山診療所の波田野徹院長にお願いした。「上腹部の激しい痛みがあり、背中の方まで痛みが放散するなどの症状がある場合、急性膵炎が考えられます。膵臓は胃の背中側に位置するため、腹部から背中にかけての痛みが起こります。痛みの出かたは急激で、痛みは持続します。また、吐き気や嘔吐を伴うことが多く、膵臓が異常をきたすことにより、胃や腸などの膵臓の周辺臓器にも炎症の影響がおよぶためと考えられています。
それでは、急性膵炎はどうして起こるのでしょうか?
現在分かっている原因のなかで最も多いのは、アルコールの過剰摂取と胆石です。暴飲暴食が発症のきっかけとなることがあります。飲酒量の多い30~50歳代ではアルコールが、50~70歳代では胆石が原因として多くなっています。アルコールを摂取すると膵臓が刺激されて、膵液が過剰に分泌されます。それに加えて、膵管の出口がむくんで膵液が膵管内にたまって内圧が高くなり、それによって膵管の壁が破綻して、膵液が膵臓自体を消化して膵炎を起こします。
膵液には、アミラーゼ、トリプシン、リパーゼなどの消化酵素が含まれていますが、急性膵炎はこれらの消化酵素が活性化されて、膵臓自体が自己消化される病気なのです。また、胆石が胆管と膵管の合流部分(十二指腸乳頭部)に詰まると膵管の出口がつまり、膵液の流れがせき止められ、同様の自己消化が起こり、膵炎を発症します。…続きは本誌にて