『逆流性食道炎』
2012年10月25日
上原消化器内科クリニック院長
上原 一浩 氏
■医師データ
富山医科薬科大学(現富山大学)医学部卒。新潟市民病院、立川総合病院、新潟大学医学部第三内科、新潟臨港病院を経て平成22年に開業。専門分野は消化器病、消化器内視鏡、肝臓病。医学博士。
最近、テレビなどで注意喚起されることが増えてきた逆流性食道炎。今回は、不快な症状が慢性化することもあるこの病気を取り上げる。解説は上原消化器内科クリニックの上原一浩院長にお願いした。「逆流性食道炎はこれからますます増えると予想されています。この病気は、胸焼け、胸の痛み、酸っぱいものがこみ上げてくる( 呑ど んさん酸 )などの他に、ゲップ、お腹の張り、空咳、喉の違和感、つかえ感などがみられることもあります。
これらの症状は、胃酸が食道へ逆流することで起こります。食道には胃のように酸に対する防御機能がないため、酸により容易に粘膜が炎症を起こしたり、ただれてしまいます。
胃酸が逆流する原因としては加齢による胃と食道がつながる部分のゆるみ、食事の欧米化、食べ過ぎ、肥満、ストレスなどが考えられます。
またピロリ菌の感染者が減ってきたことも原因のひとつとして指摘されています。ピロリ菌が胃に感染すると長い間に胃粘膜が萎縮し胃酸分泌量が減少してきます。若い人ほどピロリ菌感染者が少なく、そのような方は胃酸分泌量が保たれたまま加齢と共に逆流性食道炎になりやすいと考えられます。
診断は食道に炎症やただれなどがないか内視鏡で観察するのが一番確実です。定期的に内視鏡を受けておられる方であれば、胃酸を抑える薬を1週間程度内服して頂き、症状が改善すれば逆流性食道炎と考えてもある程度問題ないと思われます。
治療は前述の胃酸を抑える薬の内服と食生活の改善が中心になります。
食事は症状を悪化させる脂っこいもの、甘いもの、香辛料など刺激の強いもの、アルコールなどを控えることが望ましいです。また食べ過ぎ、食後すぐに横になる、肥満、前かがみの姿勢、ベルトなどで腹部を締め付ける、タバコ、ストレスなども食道炎を悪化させる原因になりますので注意が必要です。
逆流性食道炎は油断すると再発することが多い病気です。また食道癌や胃癌でも逆流性食道炎と症状が似ていたり、前述の薬で症状が軽快することがありますので自己判断は危険です。特に60歳以上で飲酒、喫煙の習慣があり、内視鏡検査を何年も受けておられない方はぜひ専門医を受診してください」(談)…続きは本誌にて