大学入試・一般選抜における「日東駒専」と「大東亜帝国」にある壁
2024年11月01日
10月7日に出願が締め切られた2025年度大学入学共通テストには、約50万人の出願があったという。この多くが、3月まで続く大学入試の一般選抜に臨むことになる。大学全入と言われる時代に、なぜ1日の半分の時間を学習時間に充ててまで大学に行こうとするのか。そこには受験生のホンネと、そのホンネから見える壁があった。
努力は報われたい
旺文社教育情報センターは今年8月、「―人口減と大学入試― 真の『大学全入』は2035年か⁉」と題する記事をネットで公開した。
これによると、2024年度の高校・中等教育学校卒業生数は103万人、大学入学定員は63・6万人、大学受験者数は64・7万人だったという(数字は同社の予測を含む)。高校生の6割が大学進学を希望し、その数と大学の入学定員がほぼ同じだったというのだ。
少子化が進んだにもかからず大学が増えたおかげで、いまは理論上、大学進学を希望する高校生のほぼ全員が大学に進学できるようになった。単純に考えれば、大学は定員割れしない。現実には、全国の私大の60%が定員割れしている(「日本私立学校振興・共済事業団」調べ)。大学の定員は、
「学費の安い国公立大と都市部の大規模な私立大から埋まり、地方の特に小規模な私立大は定員を埋められない」(県内の高校教員)
という現実がある。定員が真っ先に埋まる国公立大と都市部の大規模私立大には共通項がある。分かりやすく言えば「勉強しないとまず合格できない」だ。
国公立大に行きたければ、これまでは5教科、これからは6教科で、共通テストで最低でも6割以上の得点が必要。なおかつ記述力・探究力も磨かないといけない。都市部の大規模私大の難易度は高く、偏差値では最低でも55以上が必要なので、誰よりも高得点を取れる学力を身に付けないといけない。
一方で、定員割れに喘ぐ私大は事実上、競争が起きていない。たとえば、募集定員100人で受験者が500人いたとしても、500人全員近くを合格させるという私大はかなり多くある。それにもかかわらず、入学者が100人に満たないから定員割れを起こすのだ。定員割れしていない大学でも、一般選抜ではなかなか受験してもらえないため、指定校を含む推薦入試などで何とか埋めているという現実がある。そういう大学より難易度が高く、有名な大学に行きたい受験生が多いからだ。
選びさえしなければ大学生になれる時代にあって、あえて受験勉強に打ち込む。人によっては超難関な大学を目指す。それには高校生なりの理由があった。ある旧帝大に進学した大学生が言う。
「(母校は)周りからも進学校と言われていたし、校内も大学進学が当然のような雰囲気はありましたが、成績上位と下位とでは、目指すところが違っていました。成績上位はだいたい毎年、難関と言われるような大学を目指していて、下位だと特に受験勉強しなくても解ける入試問題を出すような、難易度の低い大学への進学が多い学校でした。
進学校と言われる学校に行き、かつ成績上位になると、努力は報われたいと思うようになるんです。もう少し本音を言うと、成績下位の人や勉強量が少ない人でも行ける大学には行きたくないとか、非進学校でも合格できる大学はイヤとかなど、少なくとも私は思うようになりました」
この大学生の意見が進学校生徒の声を代弁しないまでも、「進学校」や「難関大」というレッテルが、受験勉強をさせる動機として機能しているとは言えよう。進学校の生徒が行きたいと考え、あるいは行きたくないと考える大学の境界は奈辺なのか。…続きは本誌で