思い込みが危険な大学の序列・難易度
2024年03月27日
大学入試の一般選抜に臨む受験生の多くが、国公立大学と私立大学を併願して受験することだろう。では、併願する大学を決める物差しは何になるだろうか。大学の所在地や知名度、学部・学科、授業料など要素は諸々あるだろうが、実は最も気にかけるのは難易度かもしれない。第1志望と遜色ない難易度の大学に行きたいのが受験生心理。そこで気を付けてほしいことがある。
「明大なんぞ、行きたくねーなー」
少し前のことだが、ある学校の教員が実例として教えてくれた話がある。
「新潟大学がダメなら、せめて明治大学でも…。面談の際に保護者からこう相談された時には面喰いました」
現在の受験生は、新潟大学と明治大学は、どちらの難易度が上だと思っているだろうか。保護者が受験生の頃の両大学の難易度・序列はどうだったろうか。
元公立高校教員が言う。
「私らが大学受験をした1970年頃は、『明治大学なんぞ、行きたくねーなー』が多くの受験生の意識としてありました。仮に新潟大学と明大の両方に合格すれば、迷わず新大に進学でした。ちなみに、明大ではなく早慶上智(早稲田大、慶応義塾大、上智大)クラスにダブル合格したなら、迷わず早慶上智でした。ただし、その併願がどれくらいあったかとなると、実際にはほんのわずかだったはずです。
この傾向は1990年頃までありました。これ以降は、新大とダブル合格してもほぼ無条件に明大に進学というケースが出るようになります。同時に、両大学を併願するパターンもレアになっていきます。
時を経て明大の難易度、ブランドが上昇し、いまでは新大を第1志望とする受験生の学力では、明大に合格するのは厳しくなりました。逆に、明大を第1志望にできるような受験生は、新大ではなく東北大学など難易度の高い国公立大学を受験するようになりました。
いま、『新大がダメなら明大でも…』は通用しません。受験生も保護者も、過去の記憶や体験、思い込みで受験・併願を決めてしまうと、失敗してしまう可能性が高いため要注意です」
現在の大学は、偏差値によって序列が明確になっている。大学入学共通テストやセンター試験の前身である共通一次試験が導入されるまで、このような序列は明確ではなかったという。
「各大学が個別にやっていた試験に、共通一次という共通問題が導入されたことで、それまであまり明確でなかった国立大学間の難易度序列が、偏差値という1本の尺度ではっきりつけられてしまいました。
それまで各地方で特色と力量を発揮していた地方国立大学が、偏差値序列で相対的に低位に位置付けられてしまいました。受験生も偏差値でブツ切りにされ、幅広く入学していた学生の学力レベルは均一化され、一定のスパンの中に収まるようになってしまったのです。結果として、地方国立大学の地位が極端に低下。大学の特色や力量も、どこかへ吹っ飛んでしまいました。代わって、偏差値による序列が猛威を振るうようになったのです。
すると、どの国立大学がどの私立大学と併願され競合するようになったか、結果(合否)はどうなったのか、などについて明快なデータとして示されるようになりました。東大受験生のうち早大に併願したのは何人いて、合格率はこうだ、受験生の偏差値帯はこうだ、よって早稲田の難易度はこれくらいだ、といった具合です。そうやって私大の序列化も厳しいものとなったのです」 (同)…続きは本誌で