データで見る新潟県経済 本県の賃金レベルはいかほどか?
2023年11月27日
賃上げムード一色だ。連合が来年の春闘で5%以上の賃上げを目指すと言えば、政府は前年度より給与総額を8%以上増やした企業の法人税を優遇する検討に入ったという。統計上、賃金は前年同月比を上回る月が続いている。しかしながら、物価上昇率がこれを上回ることでチャラにしている。生活の困窮感が拭えない原因だ。賃金と物価の動きを追ってみた。
賃金上昇を上回る物価
最近になってようやくである、物品値上げのニュースを聞かなくなったのは。だがここ2年程は、あれもこれもという具合に値上げラッシュが続いていた。
「はぁ、また上がるのぉ」
テレビが報じる値上げのニュースを見ては、どの家庭でもため息が漏れていただろう。
「定期昇給以外には上がっていない」
あるいは、
「1円も上がっていない」
あくまで筆者の周囲の話ではあるが、物価上昇分を加味した賃上げの恩恵に与った人物はほとんどいない。「賃金アップしただけマシ」と言えなくもないが、事はそう単純ではない。
「一般論で言えば、給料が上がればその分、所得税が多く取られ、保険料や年金も多く取られる。手取りで増える額は微々たるものだから、使える生活費が増えているとは言い難い。
そこに物価上昇がのしかかる。物価が上がれば消費税も余計に取られる。税率10%として、1千円の品物には100円の消費税がかかる。同じ物が1200円に値上がりすると税額は120円。税込み1100円で買えた物が1320円になり、220円も余計に支払わされるようになった。ここ1、2年は、食料をはじめとする生活必需品のほとんど全てが値上がりしたわけですか
ら、“余計に支払うお金”がべらぼうに増えました。
給料は確かに増えたものの生活費が増えない。なのに出費だけは増える。どうしたって物価上昇分を加味した給料アップにならないと生活が苦しくなる一方です」
と恨めしそうに語るのは中小企業のサラリーマン氏。自身の給料は定期昇給分のアップだけと言う。
最近でこそ岸田政権は減税や給付を言い出している。それでも内閣支持率が上がらないのは、「そんなんじゃ家計は楽にならない」と、多くの国民が不満に思っているからではないか。
図1をご覧いただきたい。厚生労働省の毎月勤労統計調査をもとに、全国の平均賃金の増減を対前年同月比で指数化したものだ。ゼロの線は前年同月と同じ額の給与だったことを意味する。
名目賃金指数(現金給与総額ベース)は、単純に受け取った給料の増減を表したもの。これを見ると2022年以降はゼロの線より上にある。前年同月ベースより手取りの給料が増え続けているということは、昇給分がきちんと反映されたということだ。
グラフにはないが、「決まって支給する給与」という、ボーナスを除いた月給ベースの名目賃金指数を見ると、2022年1月以降は毎月、安定して1%を少し上回る水準で推移している。
以上から、全国的には少なくとも1%以上の賃上げが実現していることになる。
ここで思い出したいのが今年の春闘の賃上げ率。平均3・6%アップが実現したと言われている。実態は1~2%のアップだ。つまり、全国隅々にまで昇給が行われていないことをグラフは物語る。…続きは本誌で