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2024年12月23日

起債許可団体に転落した新潟県は、それでどうなる?

2023年09月27日

本県が起債許可団体に転落した。こう書くとマイナスのイメージしか湧かない。起債とは「債券を発行、募集すること」(三省堂「新明解国語辞典」)。ありていに言えば借金をすることだ。「借金をする」のに国の「許可」が必要となった「団体」(県)ということになる。全国では北海道に次いで2例目というが、県民生活に影響はあるのか⁉

 

起債は許可から協議へ

 

今回のテーマは、「新潟県が『起債許可団体』になったことによる県民生活への影響」です。珍しく記者さんから小難しいテーマ(笑)が与えられましたが、結論から言うと「大したことはありません」です(笑)。生活には大した影響はありませんが、官民ともにやらねばならぬことは山ほどあります。これについては後半でお話ししましょう。

 

起債許可団体については、総務省がかつて出した「地方債の協議制度について」という資料が分かりやすいので、これを元にまずはザックリと解説しましょう。この資料は総務省のHPから取り寄せ可能ですので検索してみてください。

 

この資料の冒頭には次のように記されています。

 

〈平成17年度までは国又は都道府県の許可がなければ地方債を発行できませんでしたが、協議制度では、地方公共団体は協議という手続きを経れば、国または都道府県の同意がなくても地方債を発行できることとなりました。(以下、略)〉

 

地方債の発行は、もともとは「許可制」だったのです。都道府県と政令市は総務大臣の許可、市町村は都道府県知事の許可がそれぞれ必要でした。

 

「平成18年版 地方財政白書」によれば、〈協議制度のポイントは、財政状況が健全な地方公共団体は、総務大臣又は都道府県知事に協議を行えば、仮にその同意がなくとも、あらかじめ議会に報告して地方債を発行できる、という点である。〉(・は本誌)とあります。「同意」とは「許可」のことです。かつて国が地方分権議論をした際に、

 

「総務大臣が、地方自治体の起債を同意(許可)するというのは、地方財政の自立権を犯しているんじゃないか」

 

という話が出ました。そこで許可制から協議制に移行したわけです。現在の制度は、一応は許可(同意)なく自由に起債できますよ、というものです。

 

「地方債協議制度のしくみ」と書かれた図をご覧ください。アスタリスク(*)が2ヵ所ありますね。注意書きを読むと、

 

〈総務大臣等の同意(許可)のある地方債に対し、公的資金の充当、元利償還金の地方財政計画への算入〉

 

とあります。つまり、同意のある起債(借金)に対しては、上限はあるけれど、金利(元利償還金)は地方交付税で面倒を見ますよ、ということです。逆に言うと、同意のない起債については面倒見ないけど、それでも良ければ起債(借金)していいですよ、ということなんですね。

 

そういうことだけれども、国や都道府県と喧嘩してまで起債する必要はありません。これまでもそうしてきたはずですが、同意を取れるように協議をして起債すればいいだけです。それが普通のやり方です。

 

いま、新潟県は図にあるように「赤字比率、実質公債費比率が一定水準以上の地方公共団体等」になりました。矢印が下に伸びていて、「許可のある地方債の発行」につながっています。新潟県は今後、起債許可団体が解消するまで国の許可なく起債はできなくなりました。…続きは本誌で

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