素人が弁護士を打ち負かした本人訴訟奮闘記
2023年08月27日
本人訴訟とは、弁護士や司法書士に依頼せずに行う裁判のことをいう。端的にいえば法律の専門家ではない素人が自分で行う裁判のことで、当然ながら勝率は決して高くはない。しかし新潟地裁での本人訴訟で相手方から和解金200万円を引き出し、実質的な勝訴を収めた人物がいる。全国的にも稀な成功例といえるが、なぜ素人が弁護士を打ち負かすことができたのか、その真相に迫る。
金融投資商品の購入代行をめぐって金銭トラブル
新潟市在住のA氏が話す。
「まさか自分が裁判を起こすなどとは思ってもみなかったですよ。しかも弁護士を立てずに行う本人訴訟ですからね。訴えを起こす前は、弁護士を立てずに裁判などできっこないと考えていました」 (A氏)
A氏の年齢は50代後半。最終学歴は高校卒で、これまで法律関連の勉強をしたことなど皆無だったという。
A氏がいう。
「しかし必要に迫られて裁判を起こさざるを得なくなったのです」 (同)
発端はかつて勤務していた会社の上司との間で起きた金銭トラブルだった。
A氏が続ける。
「端的にいえば、私が上司に金融投資商品の購入を代行してもらうよう頼んだのです。その金融投資商品を購入するためには専用口座を開設する必要があるのですが、私は口座を持っていなかったため上司に購入代行を頼み、上司もこれを快諾したのです」 (同)
A氏が上司に購入を代行してもらうために預けたお金は90万円余りの大金だった。しかしA氏はお金を託した相手が会社の上司だったことから、全面的に信頼していたという。
A氏がいう。
「金融投資商品ですから、当然ながら値上がりしたら現金化して利ザヤを受け取るつもりでした。そして購入してから1年半が経った頃、その金融投資商品の値段が急騰しましてね。“よし、ここがピークだ!”と踏んだタイミングで上司に現金化を頼みました。
すると上司から驚くべき告白があったのです。いわく“大変申し訳ありません。Aさんから購入を頼まれた金融投資商品は実のところ買っていなかったのです”と…。私はショックで頭の中が真っ白になりました」 (同)
A氏が上司に90万円余りを預けて購入するよう頼んだ金融投資商品は、1年半後に約9倍に値上がりしていたという。90万円が800万円もの資産に膨れ上がったというわけだ。
A氏が続ける。
「私が“どうなっているんですか!”と抗議すると、上司は私の前で土下座をして詫びました。そして200万円が入った封筒を差し出してきたので、私は“これだけで済むと思わないでくださいよ”と念を押して、その200万円を受け取りました。私は当然ながら残金の約600万円を返してもらわなければならないと考えていたのです」 (同)
しかし、それからほどなくして上司は弁護士に紛争解決を全面的に委任し、当事者同士の話し合いは途絶えた。…続きは本誌で