交通まちづくり 車ファーストから公共交通ファーストへ
2023年06月27日
新潟駅周辺再開発、栗ノ木バイパス工事、そして「にいがた2㎞」など、新潟市の交通軸が様変わりしようとしている。その一方で、車社会という大きな流れは変わる見込みがない。市内の公共交通の代表格であるバスは、減便に次ぐ減便の上、値上げが決まった。市は平成20年に「多様な交通手段を選択できるまちづくり」を掲げたものの、このままでは「車1択」になりそうだ。これでは80歳、90歳になっても車を運転しなきゃならない。それでいいのか、新潟市。
現状は悪循環
本稿は5月27日に新潟市内で開催された「新潟市の公共交通を考える 市民講演会」の講演録を中心にまとめたものだ。
主催した「新潟市の公共交通を考える会」(若木立也代表)は今年5月14日に発足したものの、これまで議員や行政関係者、市民など有志で勉強会、検討会などを行い、新潟市における理想的な公共交通のあり方を議論してきた。
「公共交通の議論は盛り上がらないが、公共交通に対する市民の不満は絶えず寄せられていた」と若木代表は講演会の冒頭で述べ、「市民の側から声を挙げて公共交通のあり方を議論する方向に持っていきたい」と会の開催意義を説明した。
演者は宇都宮浄人・関西大学経済学部教授。衆参両院で公共交通に関する意見陳述を行った経験や、公共交通に関する著書を多数執筆している。
同氏の講演を紹介する前に、新潟市の公共交通について、市の説明をもとにザックリとおさらいしておく。
下のグラフは、新潟市民の移動手段を示したもの(都市交通特性調査。新潟市の資料より作成)。鉄道やバスの利用は増えず、二輪車と徒歩は大きく減り、自動車だけが大きく増えたことが分かる。比較したグラフは載せていないが、新潟市の自動車分担率は、地方の他都市と比較しても高い。
一方で、これまで新潟市はオムニバスタウン事業やBRTなど、バス利用を促す政策を行ってきた。残念ながらと言うべきか、バス全体の利用者数は減少が続き、これに伴い減便・廃止の悪循環が続いている。運行便数は平成13 年以降、約2割も減少した。
現在、新潟駅周辺整備事業、越後線・上所駅整備事業、にいがた2㎞シェアサイクルなど、車以外の利用促進、利便性向上に関する事業が進められている。区バスや郊外の路線バスへの支援も継続している。
なぜ公共交通の利便性を高める事業が必要なのか。新潟市の人口が若年層を中心に大きく減少すると予測され、かつ高齢者の割合が激増すると予測されているからだ。車を使わない、使えない人が増えた時、「移動手段がない」では新潟市に住む人に加え、訪れる人までいなくなってしまう。それは、新潟市の消滅を意味する。
新潟市はよく「持続可能なまち(づくり)」と言う。新潟市が持続して存続し続けるには、人が住み続けることが大前提。人が住むには移動手段がどうしても必要だ。環境問題が叫ばれているから、環境に配慮した「持続可能な交通手段」が必要ということになるだろう。
ここから宇都宮氏の講演に入るのだが、結論から言えば「脱・車ファーストのまち」にしていこう、「車1択」の移動手段を改め、これを選べるまちにしようということだ。鉄道、路面電車、モノレール、バスなど、公共交通で各地を結び、まちなかには車を入れず、人が歩けるまちにする。公共交通を優先した政策を考えることで、環境に配慮した持続可能な公共交通体系が確立でき
るというのである。…続きは本誌で