新型コロナ「2類から5類へ引き下げ」の先に大きな落とし穴
2022年05月27日
デルタ株などに比べてオミクロン株の重症化率が低いことを理由に、「コロナは単なる風邪」という人たちが少なくない。ひいては新型コロナを現在の「2類相当」から、季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げるべきだとの意見がある。しかしそこには大きな落とし穴があることを肝に銘じておくべきだ。
ICU入院で請求額18万円という事態も
〈コロナを「2類相当→5類」指定へ〉
ダイヤモンド・オンラインは4月9日、このようなタイトルで岸田文雄首相が新型コロナの感染法上の位置付けを見直す方向に舵を切ったと報じた。
現状、新型コロナは結核やSARS(重症急性呼吸器症候群)と同様の「2類相当」に指定されている。このため行政は感染者に対して入院勧告や就業制限などの厳しい措置を講ずることができ、これがひいては医療機関や保健所の負担増につながっている一面がある。
しかしながら現在流行しているオミクロン株は感染力が強い半面、重症化率が低いことから「2類相当から季節風インフルエンザと同等の5類に引き下げるべき」との議論が高まっている。
ダイヤモンド・オンラインはここへ来て岸田首相が新型コロナの指定見直しを検討し始めた背景として、「このタイミングで見直し議論を進め、社会経済活動との両立を図った宰相として菅前首相や安倍元首相との違いを刻みたいのだろう」との全国紙政治部記者の見解を紹介しているが、果たして首相の政治的な思惑を理由に容易に指定を見直していいものなのか?
ある関係筋は「指定見直しには大きな落とし穴があります」と前置きして続ける。
「現在の2類から季節風インフルエンザと同等の5類に引き下げると、それまであった医療費の公費負担がゼロとなります。たとえばそれまで公費負担によって無料だったPCR検査が、3割負担で5千円以上かかることになります。
また仮にファイザーやメルクの経口薬を投与する必要があれば、同じく3割負担で2万円程度。忘れてはならないのは、開発されてまだ間もない新型コロナの治療薬は値段が非常に高い点です。
高齢者や基礎疾患のある人には抗体薬を投与することもありますが、この場合には1回30万円しますので、3割負担でも窓口で10万円もの支払いを覚悟しなければなりません」(県関係者)
まして重症化して入院ともなれば、さらに大変な金額がかかるという。
「芸能界でも重症化して亡くなられた方々がいらっしゃいます。そういった方々は最終的にICU(集中治療室)で治療を受けられていますが、ICUに2週間入ったらどのくらいの医療費がかかるかご存じですか? ざっと1000万円ですよ。3割負担で30
0万円に上ります。
幸い日本には高額療養費制度があり、1カ月の医療費が一定額を超えた場合、超過分が還付されます。このため1カ月の上限は平均的な収入の人なら9万円ほどで済みますが、療養費は月末締めで計算するため、月をまたいで入院すると18万円請求されることになります」 (同)
「医療崩壊」を防ぐために安易に2類から5類に引き下げたばかりに、多くの家庭で“家計崩壊”を招いたのでは文字どおり元も子もない。