交通政策のアキレス腱は「駅前広場の欠如」
2022年03月27日
「30年越しの悲願」とされるJR越後線の「(仮称)上所駅」が実現する。だがこの新駅も、新潟市の市街地にある駅に共通する弱点を抱えているという。駅前広場が整備されていない、駅へのアクセス道路が貧弱といった事情から、バスとの連携ができていないというもの。これが同市の交通政策にとってアキレス腱になっているという。
新潟市の新駅構想で明暗が分かれている。2月7日、新潟市とJR東日本は同市中央区下所島に「(仮称)上所駅」を設置することについて合意した。計画地はJR越後線の新潟駅と白山駅の間、信濃川鉄橋の新潟駅寄りだ。
周辺には県立新潟南高校や新潟ユニゾンプラザなどがある。事業費は27億円ほどで、新潟市が負担するという。構想が浮上してから、およそ30年。開業は3~4年後とされている。
一方、江南区で構想される「(仮称)江南駅」は、未だ具体的なめどが立っていないようだ。計画地はJR信越本線の亀田駅と荻川駅の間で、信越本線と整備中の新潟中央環状道路が交差する付近とされている。
「新しく誕生する上所駅にも弱点がある」と、新潟市の開発業者が言う。
「新駅へのアクセス道路が貧弱なのです。送迎用の道路でしたら、多少狭くても何とかなるとは思いますが」
そのため新駅とバスの連携が取りづらい。こうした事情は新潟市全般の課題だという。
「新潟市の交通政策にとって弱点の一つが、駅前広場がまともに整備されていないことです。そのためバスと鉄道のアクセスができていないんです。
JR越後線の沿線を見てください。改修された白山駅はともかく、関屋、青山はまったくだめです。小針駅には駅前に広場のようなところがあるのですが、そこにアプローチする道路が狭いんです。大型のバスは入れません。寺尾駅もそうですね。内野駅はまあ整備されました」(新潟市の開発業者)
「本来なら駅へのアクセスを確保し、JRとバスの連携を図るべきだ」(同)という。
「新潟交通のバス路線は越後線と同じく西方向に何本も走っているわけですが、JRの駅との間で小まめにバスを走らせた方が、地域の住民にとって利便性も高いのではと思います。
関東地方の都市では、『〇×駅行き』の路線バスをよく見かけます。新潟市の場合、バスはすべて郊外から中心部に流れるようになっています。越後線沿線の西区では、郊外からバスで市の中心部に向かう場合、青山のイオンで乗り換えが必要です。例えばバスで小針駅まで行き、JRに乗り換えて新潟駅まで行く方が、バスの乗り換えよりずっと効率的です」(同)
こうした現状のようなバス路線のあり方は「将来も続く」(同)という。
「新潟交通にとって、西区方面と市の中心部を結ぶ路線はドル箱のはずですから、既存の路線を手放したり、変えたりしづらいでしょう」 (同)
今に始まった話ではないし、今さらどうしようもないのだろうが、「新潟市の交通政策にとっても、政治主導が必要だったのでは」と思わざるを得ない。