『子宮頸がん予防ワクチンについて』
2022年02月28日
エールホームクリニック
鈴木 竜太郎 氏
■医師データ
鈴木竜太郎。弘前大学医学部卒。茨城県立こども病院で小児科医として研鑽を積む。筑波大学附属病院腎臓内科、国立成育医療研究センター病院腎臓・リウマチ・膠原病科を経て現職。
この4月から子宮頸がん予防ワクチンを取り巻く状況が劇的に変わりそうだ。厚生労働省が『積極的に接種する』に方針転換したからだ。そこで今回は、子宮頸がん予防ワクチンについて取り上げる。解説はエールホームクリニックの鈴木竜太郎医師にお願いした。
「子宮頸がんは女性の子宮の入り口部分(子宮頸部)にできるがんで、本邦では年間約1万人が罹患し、約3000人が死亡しています。20歳代~30歳代の女性が発症することも増えており、30歳代後半が発症のピークとなっています。
子宮頸がん発症のほとんどはヒトパピローマウイルス(以下HPV)が原因と言われています。HPVは主に性交渉により感染するウイルスで、性交渉経験のある女性の過半数は、一生に一度は感染機会があります。感染しても約
90%の人は無症状で経過して自然治癒しますが、約10%の人で感染が慢性化し、15~20年程度の月日を経て子宮頸がんの発症につながります。
HPVはワクチンで感染の予防が期待できます。本格的に性交渉が始まる前の年齢でワクチンを接種すれば、性交渉の機会が増えてもHPVの感染を抑制することが期待でき、子宮頸がんの発症を抑えられるわけです。日本では小学校6年生から高校1年生の女子(以下・適齢期)が定期接種の対象となります。欧米では以前から定期接種が行われており、適齢期にワクチン接種した場合、子宮頸がんの発症が80~90%ほど減少したことが分かりました。…続きは本誌