無実の罪でラブホカップルを破局に追い込んだアホ刑事
2021年12月27日
盗まれたのはラブホテルに常備されている、わずか2000円相当の電気ポットだった。ホテル側の通報を受けた警察は利用者の車のナンバーから“犯人”に目星をつけ、一組のカップルを任意同行。結局、男女が逮捕されることはなかったが、警察官の不用意な言動がもとで二人の愛に深い亀裂が生じてしまった(※新潟市で実際にあった事件を基に再構成したものです)。
2000円の電気ポットで大捜査
“事件”は新潟市の郊外にあるラブホテルで起きた、らしい。あえて“らしい”としたのは後に詳述するが、記者としてはこの一件がそもそも“事件”だったのかどうか、それすら疑いを差し挟まざるを得ないからだ。
市嶋純平さん(仮名・27)は過日、交際している彼女とこのホテルを利用した。市嶋さんはその日、彼女が運転する車でホテルに入ったという。その後、二人は普通に部屋を後にし、それから約2カ月の間、以前と変わらぬ仲睦まじい関係が続いていた。
市嶋さんがいう。
「二人の交際は彼女の親も公認済みで、僕は彼女の自宅にもたびたび遊びに行っていました」
しかし、二人の知らぬ間に警察当局はこのホテルで起きたとされる“盗難事件”の捜査を着々と進めていたのだった。
結果的に分かったことだが、ホテル側は市嶋さんカップルが部屋を出た後の清掃・点検作業で、常備していた電気ポットがなくなっていることに気付いたらしい。ホテル側がこの一件を警察に通報したことから、“大捜査網”が敷かれたというわけだ。
ご存じの読者もいると思うが、利用者が車で乗り付けるワンガレージ・ワンルームタイプのいわゆるモーテルに対しては、何か事故やトラブルが起きた場合に備えて車のナンバーを台帳に控えておくように警察がホテル側に強く指導している。
警察がホテル側から台帳の提出を受けて、電気ポットがなくなったとされる日時にガレージに入っていた車のナンバーを調べると、市嶋さんの彼女の車が該当車両と判明。彼女の交友関係から市嶋さんが捜査線上に浮上したのだった。
そしてある日の早朝、捜査員が突然、市嶋さん宅を訪れた。「市嶋純平さんですね、任意同行願えませんか?」
出勤の身支度をしていた市嶋さんは、わけの分からぬまま任意同行に応じた。とりあえず職場には電話で欠勤することを伝え、午前8時ごろ捜査員とともに警察署に向かったという。
実は同じ時刻、市嶋さんの彼女の自宅にも捜査員が訪れ、やはり任意同行を求めている。彼女もそれに応じたことから、二人
は同じ警察署の別々の取調室で事情聴取を受けることになった。
警察にしてみれば、二人が口裏を合わせて否認しないための措置だ。
市嶋さんは取調室に入るや否や、ベテラン刑事とおぼしき北野耕作(仮名)にこう恫喝されたという。
「オマエが盗んだんだろ! たかだか2000円のポットじゃないか。オマエがやったと認めちゃえよ」
まったく身に覚えのない市嶋さんは口下手のためか、口ごもりながらこう反論するのが精一杯だったという。
「よく分かりません…」
一方の彼女も容疑を全面否認していた。結論を先に述べれば、二人は電気ポットなど盗んでいなかったのだ。
事実、二人は結局のところ逮捕されておらず、以降、警察から追及を受けることはいっさいなかった。
本当に二人が犯人であったなら、以下に記す厳しい取り調べに、片方くらい自白しそうなものではないか。…続きは本誌