官製談合に副市長辞職 糸魚川市の指名停止はちょいユル
2021年08月27日
1月に勃発した市発注工事の入札中止騒動に端を発し、3月には市内で地すべりが発生。4月の市長選、市議選を経て5月に発覚した官製談合事件では、市職員や市内業者から逮捕者が出てしまった。その騒動も収まらないうちに、今度は副市長が市長選で市の職員に現職市長への投票を依頼していたことが発覚。さらに市長が怪我をして入院するわ、副市長は辞職するわ…。これはもうお祓いでもして、憑き物を落とすしかあるまい。
ホットスポットは波乱万丈
糸魚川市はホットかつディープなスポットだ。日本の「国石」とされるヒスイ(翡翠)はこの地が国内で実質的な唯一の産地。姫川の支流である小滝川や青海川の上流部は「ヒスイ狭」として知られる。縄文時代から古墳時代にかけて、この地のヒスイを加工した装飾品が各地の遺跡から出土している。
石灰岩も糸魚川の貴重な鉱物資源。市内でも旧青海町にそそり立つ黒姫山は、全山が丸ごと石灰岩といわれる。かつて石灰岩は天然ガス、電力とともに、本県工業開発の「三種の神器」と言われた。旧青海町に三井系の電気化学工業(現在のデンカ)が工場を建設したのは大正10(1921)年のこと。
昭和30年代、この地への進出計画を明らかにしたのが現在の明星セメントで、こちらは三菱系だった。当然、電気化学工業はライバル会社の進出に反対した。地元も巻き込んだ三井vs三菱の争いはエスカレートし、「小日本海海戦」と呼ばれたという。
鉱物資源だけではない。糸魚川は神様のホットスポットでもある。地方創生担当相などを歴任した片山さつき衆院議員だが、祖母の実家は糸魚川市内にある青海神社の宮司を務める銀林家だという。伝承によれば、この神社の創建は古く、奈良時代の神亀3(726)年とされる。
この地でメジャーなのは、何といっても沼河比売( ぬなかわひめ、奴奈川姫)。古事記や出雲風土記に登場する女神
で、出雲の大おおくにぬしのみこと国主命と結婚して生まれた子どもが建御名方命だともいう。
建御名方命は諏訪大社(長野県諏訪市ほか)の祭神として祀られている。全国におよそ2万5千社あるという諏訪神社の祭神は、母方のルーツが糸魚川ということになる。
前置きはともかく、今年に入ってからの糸魚川市は、まさに波乱万丈で、事件のホットスポットだった。1月には市発注工事の入札が中止となる騒動が勃発。3月には市内で大規模な地すべりが発生した。4月の市長選、市議選を経て5月には官製談合事件が発覚し、市職員や市内業者から逮捕者が出た。その騒動も収まらない6月、今度は副市長が市長選で市の職員に現職市長への投票を依頼していたことが露見。
さらに不幸は続く。副市長による公選法違反の余韻冷めやらぬ7月3日、自宅で庭木を剪定中の米田市長が脚立から転落して骨盤を骨折。入院を余儀なくされた。まさに弱り目に祟り目だ。市長が公務に復帰して記者会見を開いたのは8月3日のこと。
副市長による投票依頼の公選法違反(公務員の地位利用)について、お盆前の8月11日に市の選管が警察に告発状を提出し受理された。そして副市長は同月13日に辞職。それから5日後の18日、官製談合事件の初公判が行われ、検察は市職員に懲役1年6カ月、業者側の元営業部長に懲役1年を求刑した。判決公判は同月27日だが、月刊誌という事情から結果をお伝えすることができない。
9月には市議会の定例会が予定されているが、さらに波乱の〝糸魚川まつり〟が続くのかも。