新築工事が突如中断した寺院と工務店のドロ沼法廷闘争
2021年08月27日
ある日突然、お寺の境内で行われていた新築工事がストップした。総工費5千万円を超える大掛かりな工事である。上棟したにもかかわらず工事が中断し、建物の骨組みは3年以上も雨ざらしのまま。檀家はもちろん、地元の人たちも口々に「何かあったに違いない」と囁くが、真相を知る者はほとんどいない。
境内での新築工事が突如中断、3年以上も雨ざらしに
新潟市北区葛塚―。ここには北区民にとって馴染み深い旧新潟市北区役所の建物が当時のまま残っている。
そこから目と鼻の先にあるのが真宗大谷派の福ふ く明みょう寺じ で、お寺の名称は知らなくても隣接する墓地の存在を知る北区民は多いことだろう。
唐突ながら記者は近隣住民にこう尋ねた。「境内で行われていた建設工事がストップした理由をご存じですか?」と。
近くに住む人が答える。
「さあ、まったく分かりませんね。工事が中断したらしいという話はそりゃあ聞いていますよ。近くを通りかかったときに見れば分かりますからね、建前が終わったというのに建物の骨組みが雨ざらしのままだもの。それ以上の詳しい話は何も知りませんわ」 (60代男性)
近所の人たちに何人か尋ねたが、異口同音に「工事がストップした理由は分からない」という。
掲載写真をご覧のとおり、境内にある上棟を済ませた建物はかれこれ3年以上、工事が中断したままだという。そもそも何を建てようとしていたのか?
別の近隣住民が話す。
「詳しいことは分かりませんが、どうやら庫裏を建てようとしていたみたいですね」(70代男性)
庫裏とは、仏教寺院の伽藍(建物)のひとつで、食事を作ったり、住職やその家族が住んだりする場所のことをいう。端的にいえば多くの場合、住職の自宅ということになる。
福明寺の住職は県内では珍しく女性とのことで、その境内に女性住職の自宅を建設していたものの、何らかの理由で工事がストップしたらしい。
本題に入る前に断っておくが、この一件に関して福明寺の女性住職およびその関係者は「係争中」、つまり裁判が進行中であることを理由に取材には応じてもらえなかった。
また一方、裁判の相手方である工務店、具体的には新潟市南区に本社を置く株式会社大栄も同じく「係争中」や「個別の事案」であることを理由に取材には応じてもらえなかった。
しかしながら裁判は「公開法定」で行うのが原則だ。文字どおり裁判は公開されており、法廷で傍聴できるのはもちろん、申請すれば誰でも裁判書類を閲覧することができる。
このため本稿では、裁判書類の閲覧や周辺関係者への取材を通じて得た情報を基に記事を構成する。…続きは本誌