『うつ病の最新治療』
2021年07月27日
新津メンタルクリニック
湯川 尊行 院長
■医師データ
湯川尊行。山形大学医学部卒。新潟市民病院初期研修。新潟大学医学部精神医学教室入局。魚沼基幹病院精神科を経て開業。
新型コロナウイルス感染症流行の影響により、うつ病患者数の増加が予測される。WHO(世界保健機関)は2030年に障害調整生命年
(DALYs)の損失に最も寄与するであろう疾患としてうつ病を挙げている。そこで今回は、新津メンタルクリニックの湯川尊行院長にうつ病の治療について、最新の治療法として注目を集めている、経頭蓋磁気刺激(TMS)治療を中心に解説をお願いした。
「気持ちが落ち込んでやる気が出ないという日を誰もが経験したことがあると思いますが、1日中気持ちが落ち込んで何も楽しめず、やる気が出ない、それが何週間も続くようであれば、それはうつ病かもしれません。
うつ病は国際的に診断基準が取り決められています。典型的には1日のほとんどの間、気持ちが落ち込み、何も楽しめない状態が2週間以上続き、意欲低下、思考力・集中力の低下、疲れやすさ、倦怠感、不眠、食欲低下、自責感、死について繰り返し考えるなどの症状を伴う状態とされています。
うつ病はあくまで症状に基づいて診断される疾患ですので、その背景は様々です。心理的ストレスのみならず、性格的要因や遺伝的要因、体質的要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
他の多くの疾患と同様に適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠が予防にも効果があると考えられます。運動は予防のみならず、治療にも効果的であると報告されています。
うつ病の治療としては、薬物療法や精神療法があります。重症例に対しては、電気けいれん療法が行われることもあります。これは脳に電気刺激を与えて脳の活動を改善する治療法です。前述のとおり、うつ病と言ってもその背景は多様であり、その人にあった治療を行うことが重要です。…続きは本誌