「ワクチンは“殺人兵器”」だとする否定論者の言い分
2021年07月27日
「世界の黒幕がワクチン接種によって人類を削減しようとしている」「ワクチン接種は人間にマイクロチップを埋め込むのが目的」など、荒唐無稽な情報がネット上で拡散している。もともとはトランプ前大統領を崇拝する極右陰謀論者「Qアノン」らの主張のひとつだが、日本国内でもこうした陰謀論を信奉する人たちが後を絶たない。とはいえ新型コロナワクチン否定派の主張の中にはあながち看過できないものもある。
福井県議が「打つと5年以内に死ぬ」と活動報告書に
今年3月、福井県議会の斉藤新緑議員が支援者らに配布した活動報告書の中で、新型コロナワクチンについて「殺人兵器ともいわれている」などとし、接種をしないよう呼び掛ける記述をしていたことが明らかになった。
斉藤議員は活動報告書の中で、〈ワクチンなど必要ありません。今回のワクチンは人類初の遺伝子組み換えワクチンで、『殺人兵器』ともいわれています〉〈打つと5年以内に死ぬ〉などと記述。
この一件を最初に報じたのは地元のNHK福井放送局で、斉藤議員は同局の取材に対し「新型コロナウイルスのワクチンは本当に危ないからやめたほうがいいと思い、大事な有権者にも打ってはいけないと伝えるために書いた」とコメントした。
斉藤議員は現在6期目。議長経験者であり、自民党県連では会長代行を務める。新潟県議会でいえば、同じく議長経験者で、自民党県連筆頭副会長を務める7期目の柄沢正三議員にも匹敵する大物議員だ。
そんな地元政界の重鎮が「新型コロナワクチンは殺人兵器」などと発信したのだから、騒動は一気に広まった。同県議会に抗議や疑念の声が複数寄せられたことから、所属会派の県会自民党は斉藤議員を厳重注意した。
これに対して斉藤議員は反省するどころか、むしろ勢いを増し、県議会6月定例会の一般質問でも「ワクチンの危険性」をテーマに持論を展開。すると同議員の主張に賛同する人たちから励ましの手紙やメール、さらには講演依頼まで来ているという。
斉藤議員とは果たして、どのような人物なのか? 問題の活動報告書に目を通すと、同議員は少なくとも新型コロナワクチンに関して米国発祥の「Qアノン」と同じような思想を持っている印象だ。
「Qアノン」とは、ドナルド・トランプ前大統領の支持層を中心に数十万人の信奉者がいるとされる極右陰謀論のことで、新型コロナウイルスを脅威だとする風潮に猛反発。
新型コロナウイルスはそもそも存在すら証明されていないとし、全人類を対象とするワクチン接種についてもディープ・ステート(影の政府)によって仕組まれたものだと主張している。
以下、斉藤議員が記した活動報告書を詳しく検証していく。…続きは本誌